第75章 ※章名については1627Pをご覧下さい
結局、引越しはお姉さんが手伝ってくださる事になってしまった……。
私の引越し予定日、涼太のお父さんは仕事との事だったので、冷蔵庫や洗濯機などの大型家電だけはプロに頼んで、後の私物や小型家電は車で運んで下さるって。
いいんだろうか、黄瀬家の皆さんには本当に甘えてばっかりで……。
私、本当に恵まれてる。
「なんかみわちゃん、痩せた?」
「えっ……そ、そうですか?」
涼太のお母さんにも言われたこと。
毎日体重計に乗る習慣がないから分からないんだけど、確かにあの事件でご飯がちゃんと食べられなくなってから……身体が軽くなって、怠さが増した気がする。
でも、目で見てすぐ分かるほどなのかな……そんなに私、不健康そうな感じ……?
「……あ、姉ちゃんココ」
「はいはい」
少し答えるのが気まずいと思っていたら、タイミング良く到着してくれたみたい。
車は、濃いグレーの壁が綺麗なアパートの前で停車した。
涼太の部屋は2階の奥、角部屋のワンルームだ。
「わあ、綺麗だね!」
去年出来たばかりのこのアパートは、設備も最新。
カラーモニター付きのインターホン、追い焚き機能付のお風呂、システムキッチンにエアコン1基付き。
バス・トイレは別だし、クロゼットの他に屋根裏収納まである。
「なにここ、最新じゃない。ナマイキー」
私とお姉さんが段ボールを運び、涼太と涼太のお父さんは、2人で家電を運ぶ役。
「他に、もう空いてなかったん……だって、ば、ヨイショ」
「エレベーターもないし、荷物運ぶのしんどい! もう!」
「ごめんてば」
ぶつぶつと言いながらも手伝ってくれるお姉さんと、色々なお話をした。
新しく彼氏が出来たというお姉さんは、キラキラしてて。
やっぱり、恋って凄い力があるんだな。
そんな事をしみじみ感じてた。
結局この日は、荷物を運び終えた後、生活に必要なものをホームセンターなどで買っているうちに日も暮れ、解散となった。
帰りは、お姉さんが車で送ってくれた。
涼太とふたりきりの時間は……なかった。