第75章 ※章名については1627Pをご覧下さい
3月は、人の流入が多いシーズン。
すぐに動かなければ、物件はどんどん埋まってしまうだろう。
あきと私は早速、行動に移した。
どうやらテレビ番組の影響で、シェアハウス用の物件というものが増えて来ているらしい。
いくつか物件を見せて貰って、駅からは少し歩くけれど、暗い道を通らずに済む、スーパーやコンビニが近くにあるなど、生活がしやすい場所。
オートロックなどのセキュリティがあるマンションにした。
間取りは2LDK。
6畳の部屋をそれぞれの私室にして、12畳のリビング(キッチン込み)を、共用部として利用する。
元はファミリー向けに造られたのか、バスルームとトイレが別になっているのが嬉しい。
玄関から入ってすぐの廊下にひとつ部屋があり、もうひとつの部屋はリビングを抜けた先にある。
耐震性能を鑑みて大きな窓は無いけれど、日当たりが良く、部屋の中が明るい印象で、2人ともすぐに気に入った。
慎重になり、考えすぎるほど考えてしまう私1人では絶対有り得ないけれど、あきの後押しもあって、その場で決定した。
契約の時には、あきのお母さんとおばあちゃんにも来て貰って。
即日入居可能の物件だったので、それぞれ引越し準備が出来次第、入居する事になった。
家電は、私が独り暮らしをしていた時におばあちゃんに買って貰った物をそのまま使用する事にした。
テレビも冷蔵庫も1人用のサイズではあるけれど、それほど問題はないと思う。
不便になったら買い替えよう、というくらいのつもりで。
驚くほどトントン拍子に話が進んでいった。
夜、涼太にメッセージアプリで報告すると、すぐに電話がかかってきた。
『え、あきサンと? ルームシェア? で、もう決めてきたって? すぐに引越し?』
ハテナがいっぱいついた涼太の質問に、1つずつ答えていく。
『……ま、とりあえずふたり暮らしっていうなら、それはそれで安心っスわ。こっちもね、決めて来たっスよ。学校からすぐ近くのアパート』
お互いの駅から駅まで、乗り換えがうまくいけば2時間弱。
東京都と神奈川県、隣同士なのに……新幹線で名古屋まで行く方がよほど近く感じる。
『引越し、手伝いに行くっスね』
遠距離恋愛って言うのかな、これ。