第75章 ※章名については1627Pをご覧下さい
「ごめんね、突然」
お茶を一口飲んだあきは、神妙な顔つきで話し始めた。
「今流行りのシェアハウスってやつ。どう? 家賃の負担も小さいし、夜1人で怖い思いをしなくて済むしさ」
確かに……誰かと一緒に住めるなら、こんなに心強い事はない。
「でも、あきの大学からじゃ、電車移動が必要になるよ? もっと近い所の方がいいんじゃない?」
そこまで言って、気が付いた。もしかして、誰かに私の事、聞いた?
そう思ったんだけど……
「うーん……そうなんだけどさ、……ごめん、やっぱり隠したくないから言うわ。
ちょっと、彼から一緒に住もうって言われててさ」
あきのこの様子……違う。
私の事を聞いたわけじゃ……なさそう。
「えっ、いいじゃない。ダメなの?」
あきらしくない歯切れの悪さ。
どうして同棲の話になっているのに、私と住むなんて言うんだろう?
「……結婚したいって、言われて」
目の前にパチリと火花が散ったような驚き。
結婚。
「えっ、えっ、すごい!」
相手は社会人だもんね……きっと、あきの卒業を待ってからと思っていたんだろう。
でも、どうして乗り気じゃないの?
「どうして私と住もうなんていう話になるの? 彼氏さんとずっと一緒に居られるのに」
いいな、いいな。
でも、あきの表情は全然晴れなくて。
マリッジブルーというやつ?
いや、でもまだプロポーズは受けてないんだよね?
うう、私がオロオロしてどうするの。
「……ちょっと、考えたくてさ。他の女の影も最近気になってるし……」
「……え……」
それって……浮気ってこと?
「あ、でも無理にとは言わないよ。大学が同じ沿線だしさ、どうかなって相談したかっただけ」
……あきは、こんな事を軽率に言うようなひとじゃない。
きっと、悩んで悩んでの結論なんだ。
「……うん、私も助かる。これから家探ししようとしてたところだし……じゃあ一緒に家、探そう」
驚いたように顔を上げたあきは、どこかホッとした表情だった。