第75章 ※章名については1627Pをご覧下さい
「みわ……これからもずっと、オレの隣に居てよ。オレ、星も、花火も、花も……どんなモノでもさ、みわに見せたい。みわと見たいんスよ」
「……」
言葉が、出ない。
涼太と一緒に見た星空、大輪の花火、体育館の景色、一緒に買った小さなお花……彼との想い出は、美しいものばかりで。
そっか……どんな事件があっても、辛い事があっても、この想い出だけは、穢されないんだ。
涼太の言葉は、穢れない。
「しばらく、近くには居られないけど……オレ達どんなに離れてても、こころは繋がってるから」
薄い明かりの中でぼんやりと浮かび上がるその姿は、まるでどこぞの国の王子様のようで……一瞬、その非日常感にポーッとしてしまった。
……そう、彼との想い出と、この言葉があれば、大丈夫。頑張れる。
「うん……頑張ろうね」
じわりと目尻に滲んでくる涙は気にしないように話していても、どうしても鼻声になってしまう。
「……お祖母さんも待ってるっスね。そろそろ」
「うん……」
伏せていた目を上げて、ベッドから起き上がろうとしたら……宝石のような瞳が目の前にあった。
きらきらと輝く彼の瞳に映っている自分と目が合ったかも、なんて思っていたら、また唇が重なって。
淫らな水音だけが響く、密やかな、甘やかな行為。
そっと寄り添ってくれるような、優しい優しいキスだった。
頑張ろう。
自分がもうダメだと思うところまで。
走り続けよう。
ボロボロになって走れなくなるまで。
自分がやれるだけやって、その先を見極めよう。
そこに、どんな未来があるのかは分からない。
でも、やらずに後悔はしたくない。
こうして、私たちは……
卒業、した。