第75章 ※章名については1627Pをご覧下さい
「モシモシ、黄瀬です……スンマセン、みわの事、ちゃんと送ってくんで……ハイ、ハイ……」
濃密なキスのあと、涼太が私の代わりにおばあちゃんに連絡すると言ってくれて。
通話を終えた涼太がベッドへ戻ってくる。
涼太の動きに合わせて、ギシッと軋むベッド。
それが、彼がそこに居ることの証明のような気がして、その音を聞いているだけで、気持ちが落ち着いてくるから、不思議……。
キスして、抱き合って、触れ合って、名前を呼び合って……これ以上ない、幸せの時間。
「ごめん、ね……本当に」
「お祖母さんも、ちゃんと分かってくれてたっスよ。ホントは泊まってって欲しいけど、それは……ガマン」
「うん……」
ワガママ言って、ごめんなさい……。
私は生理中だし、そういう事が出来るわけでもないのに。
「オレ、セックス目当てじゃないから気にしないでね」
こころの中とピタリとリンクしたその言葉に、驚きを隠せない。
「涼太は……どうして私の考えてる事が分かるの?」
「はは、流石に分かってるワケじゃないっスよ。みわなら、気にすんだろーなって」
涼太は、私より私のこと、分かっていてくれてるのかもしれない。
時々、そんな風に思うことがある。
「……涼太、私と付き合ってくれて、ありがとう」
「みわ」
「っ……ん」
すり、と首の後ろを撫でられて、びくりと身体が反応する。
「オレこそ……みわには何度ありがとうって言えばいいのか分かんないっスよ。
それに……学校で、ずっと嫌がらせされてたんスよね。オレ、気付かなくてさ……本当に、ごめん」
今度は、淫魔のような色香で唇を奪ったあの表情とは全く異なる、捨てられたワンコのような顔。
知らないあなたを、もっと知りたくて。
「涼太と一緒に居るっていう事が、どういう事か……分かってるつもり。嫌がらせに耐えなきゃいけないとか、そういうのじゃないの。ただ、"黄瀬涼太"の隣に、堂々と並んでいたかったの」
それは、私のちっぽけなプライドのようなもの。
本当は、彼の隣に居ていいのか、答えが出せない自分に暗示をかけたかっただけかもしれないのだけれど。