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【黒バス:R18】解れゆくこころ

第75章 ※章名については1627Pをご覧下さい


「ごめ……っ、なさい……」

言ってはいけない事を──言った。
このタイミングで、絶対に言ってはいけない事。

「なんでもないのっ! つい……!」

つい、で言っていい事じゃない。
辛いのも、寂しいのも私だけじゃないはず。
鼻水まで垂らして、困らせてどうするの。

「涼太、もう帰……っ」

そこまで言いかけて、言葉を失った。
涼太と、目が合ったから。
その瞳からも、涙が流れていたから。

新しい言葉の欠片が私の口から紡がれる前に、涼太は私の手を強く引いた。






体育館を施錠してから寮の部屋の鍵を開けるまで、一切の無駄な動きは無かった。

電気を点ける事もなく、靴を放り投げて脱ぎ、なだれ込むように入った室内で、すぐに唇を塞がれた。

熱い。
さっき、冷たいと感じた唇とは別のものみたい。

「りょ、っ、た……っ!」

啄む、なんて可愛い表現じゃない。
まるで、食べられてるみたいだ。

「ん、ぁ……っ」

唇が触れて、擦れて、舌が分け入ってくると、濡れた音が響いて。

もう、自分の意思では身体を動かせない。
追いかけてくるのは、背中に触れたベッドのスプリングの感覚。

「みわ……もう1回、言って」

「っえ……?」

「もう、1回」

もう1回……?
言って、いいの……?

「……私、離れたく、ない……」

「うん。オレも」

「離れたく、ないよ……」

「うん……」

分かってる。
ふたりとも、同じ気持ちだって。

「……ごめんなさい。今日までだから。こんな風に弱音吐くの、今日までだから……」

「分かってるっスよ、みわ。
明日から離れて頑張るためにさ、今、甘えて。たっぷりと」

ふわり、優しい言葉とともに、涼太の腕の中に閉じ込められた。

「涼太、ありがとう……」

ごめんなさい。
甘えさせて。
最後、だから。

慈しむような、癒すような柔らかい唇が、私の気持ちを受け止めながら、優しく重なった。





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