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【黒バス:R18】解れゆくこころ

第75章 ※章名については1627Pをご覧下さい


口数が、減ってきた。

ふたりとも、この貴重な時間を噛みしめるように、体育館の中をぐるぐると歩いて回ってる。

みわも、分かってる。
こうしていられるのももう、最後だって。
やりたい事をやりたいだけやれるっていうのは、もう終わりだ。
それがきっと、一歩オトナになるってこと。

もう、21時を過ぎてる。
お祖母さんに連絡も入れたし、体育館はコッソリ合鍵を借りてるから大丈夫だと思うけど、本当にもう……帰らなきゃ。

「みわ、そろそろ」

「涼太」

「うん?」

繋いでいる手をぎゅっと握って、みわは立ち止まった。

オレたちが今立っている所は、ちょうどコートのセンター……試合が始まり、終わる場所。

「涼太……今まで、ありがとう」

みわは、月の光を受けている時が一番キレイだと思う。
ぼんやりと光って、女神みたいだ。

「こちらこそ、っスよ。今日さ……お祖母さんも言ってたけど、みわ、メチャクチャカッコ良かった。誇らしかった」

立ち向かっていく姿があんなにも美しいというのを、彼女の背中から教わった。

みわは、いつもオレのおかげとばかり言うけど、きっとオレの方が貰っているものは多くて。

「みわから貰ったもの、今度はオレがお返ししていくからさ」

「ううん、私の方が……」

「いや、オレがさ」

そんな言い合いを暫くして、ふと目が合って、笑った。

「ハハ、キリないっスね」

「ふふ、そうだね」

繋いでいる手を握り直して、出口へ向かう。
もう、送ってってあげな
「……たく……ないな」

……え?
今、なんて?

「あ……なんでも、ないの。ごめんね」

「みわ」

「明日、朝から不動産屋さん巡りするんだよね、寝坊しちゃったら大変。帰ろう!」

するりと繋いでいた手を離して、みわは駆け出した。

「みわ、待って!」

慌てて追いかけて、その手を掴み直す。
離す気なんか、ない。

「ねえ、」

言いかけて、気が付いた。
みわが、泣いてる。

「りょうた……」

みわの気持ちが痛いほど伝わってきて、胸が、切り裂かれたみたいに痛い。

「涼太……離れたく……っ、ないよ……!」




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