第75章 ※章名については1627Pをご覧下さい
ビィン……と、耳の中で音が反響している。
一瞬の機械音と共に訪れた、耳朶の違和感。
我慢出来ないほどではなくて、ジンジンと響くような痺れるような痛みだ。
「……開いたよ、みわ」
「あ……ありが、とう」
「痛い?」
「ちょっとだけ。でも、大丈夫」
耳朶に軽く触れると、金属の感触。
わ、本当に、開いたんだ……。
「オレさ、言ってあげるの忘れてたんスけど、このファーストピアスでピアスホールが完成するまで、結構時間かかるんスよ」
「あ、そっか、そう……だよね」
「だから、オレとお揃いのピアスは、ピアスホールが出来上がったら着けてあげる」
そうだった。
いきなり着けられるものじゃないんだよね。
気持ちばかりが先に行ってしまってた。
消毒もちゃんとしなきゃ。
「どの位かかるのかな……?」
「んー、個人差があるけど、3ヶ月もあれば確実なんじゃないスかね」
「3ヶ月……かあ……」
早く、着けたいな。
お揃いのピアス……。
欲張りなのかな。
涼太に貰った物、ひとつひとつに勇気を貰ってる。
これ以上望むなんて、贅沢だ。
我慢、我慢。
「じゃ、オレの誕生日に着けさせて」
「え? 涼太のお誕生日に?」
「そ」
涼太のお誕生日は6月18日。
確かに、ちょうど3ヶ月と少しだけど……。
「……それ、変じゃない? 涼太のお誕生日なんだから、涼太にプレゼントを渡さなきゃいけないのに、私が貰っても……」
綺麗な琥珀の瞳が、ゆるりと緩んで近付いてきた。
「いいんスよ。ね、誕生日に着けさせて?」
優しく、甘い視線。
でも、どこか熱が篭っているそれは、私を内部から熱くさせる。
「……涼太が、いいなら」
もう、その瞳を見たらYESとしか言えないよ。
ずるいよ……。
「みわ、鏡見る?」
涼太は鞄から小さな鏡を手早く取り出して、こちらに向けてくれた。
「わ……」
いつもの耳に、黄色い石のピアスが着いている。
それだけのはずなのに、全く新しい自分のような気がして、生まれ変われたような気分だった。