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【黒バス:R18】解れゆくこころ

第75章 ※章名については1627Pをご覧下さい





「はぁ……終わっちゃった、ね」

「……そっスね」

楽しい時間はあっという間。

あれから、皆の目元からの降水量は増えていく一方で、最後の最後まで泣きながら、笑いながら、皆で過ごした。

楽しかった宴はおしまい。
今は、誰もいなくなった体育館に、涼太とふたり、佇んでいる。

照明は、私たちが立っている一部分を除いて消灯してしまったため、薄暗い。

その代わりに、皆の汗と涙、バッシュの跡が刻まれた床を、ひっそりと現れたお月様が照らしてくれている。

皆がいる時はあんなに狭く感じた体育館の中は、今はとっても広く感じて。

まだ少し残っている熱気に包まれているような気がして、目を閉じて深呼吸をした。

これからは、ふたりの約束の時間。

「みわ、……ホントにやっていいんスね?」

「うん、お願い」

すこし躊躇いがちだった涼太は、ハァと息を吐いて、その場に座る。

そのままカバンを探り、ビニール袋を取り出すと、彼のコートをおもむろに床に広げた。

「涼太……?」

「冷えちゃうから。ここ、座って」

「えっ……大丈夫だよ、コート汚れちゃうよ」

中からピアッサーと消毒液のボトルを取り出すと、一旦床にそれを置いて、手のひらをこちらに大きく差し出した。

「おいで、みわ」

はちみつのような甘くとろける声で呼ばれ、なす術なくその腕の中へと吸い寄せられる。

抱きしめられ誘導されるまま、涼太のコートの上に座った。

ちゅ、と額に触れた唇は、少し冷たい。
唇とは対照的な温かい指先が、右耳の耳朶に触れる。

「……右で、いっスか」

「あ……左右どっちにするかは考えてなかったんだけど……」

お揃い、というくらいで具体的には考えてなかった。

「左耳のピアスは守るヒト、右耳のピアスは守られるヒトって意味があるんだって。
ごめんオレ、今まで全然みわの事、守れてないけど……これから先は、守らせて」

小さく頷くと、彼の冷たい唇が、私のそれと重なった。

温度と湿度を上げていく唇。

涼太の左耳のピアスが、月の光を受けて煌めいた。




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