第75章 ※章名については1627Pをご覧下さい
私が、皆の希望に……?
私にとっての涼太みたいに、少しでも、そんな存在になれていたの?
「ああー神崎先輩、余計に泣かせちゃいましたね……」
「……って、なんか今途中で、凄いオネガイ混じってなかったっスか?」
……うん、私もちょっとだけ、思った。
「あ、黄瀬先輩の隣に居て欲しいってやつですか?」
「そそ、ソレソレ。なんか代理プロポーズみたいじゃねえスか?」
「すんません……でも、本当にそう思うんです。黄瀬先輩と神崎先輩は、ふたりでひとつなんだって。どっちかが欠けたら、ダメなんです。おふたりが一緒に居るのを、ずっと見ていたいんです!」
シーンと一拍置いて、私以外のメンバーから大爆笑が巻き起こった。
「笠松! アドリブで何言ってんだよー! 先輩たち困ってんだろ!」
「いや、オレは全く困ってないっスよ! オレはみわとずっと一緒に居るっスからね!」
おお、と盛り上がる場内。
私はというと……追いつけてない、会話に。
涙は次から次へと流れてくるのに、周りは皆、楽しそうに笑ってて。
ど、どうしたらいいの?
「っ、えと……」
「神崎先輩、俺たちは先輩の笑顔が好きなんです。きっと、泣かせちゃうと思ったんで、コレ……いいですか?」
笠松くんに導かれるまま、フォトフレームを手渡した。
「ここ、空けておいたんすよ」
確かに、フォトフレームの右下は何も写真が入っていない空白スペースだった。
何か、意図があるのかと思ってたんだけど……?
「お待たせしました」
「あ、ありが……ぶっ!」
笠松くんが追加で挟んでくれた写真は、さっきの……謝恩会での涼太モノマネ写真だ。
本物の涼太を先頭に、残像のように踊っている姿が、鮮明に写されている。
堪らず、吹き出した。
だってもう、可笑しくて可笑しくて。
「あは、あははっ! これ、本当に面白かったね!」
泣いたり笑ったり、もう感情の振り幅が大きすぎてわけがわからない。
皆で写真を見て、更に笑った。
「これからは、夢に向かっていって下さい。先輩の座右の銘、"努力は人を裏切らない"って、先輩のためにある言葉なんだと思います」
こんなに、優しい世界。
私が、辛くて泣いていたのと同じ世界のはずなのに、こんなにも温かくて、柔らかい。