第75章 ※章名については1627Pをご覧下さい
良かったね、涼太。
本当に、良かった……
「ちょ、みわ、泣きすぎ! 大丈夫っスか? 目も鼻も真っ赤っスよ!?」
「う、ごめんなさい、だって、だって……」
嬉しくて、嬉しくて。
涼太がずっとひとりで背負ってきたエースの責任が、主将の重圧が。
ウィンターカップの優勝でようやく報われたと思ってたけど、更に皆にこんな風に言って貰えるなんて。
止めようと思っても、止まらない。
「うぅ〜……」
「もう、みわはまったくさ……ホラ、みわのも読んでもらお」
笑いながらぽんぽんと頭を撫でてくれる手が、大きくてあったかい。
「じゃあ、最後に……神崎先輩」
「……っ、はい」
笠松くんは、薄い黄色の封筒から、同じ色の便箋を取り出した。
向こう側がかすかに透けて見える。
向日葵の柄の便箋だ。
「神崎先輩への言葉も……ありがとうございます以上の言葉を探したんですけど、見つからなくて」
笠松くんが微笑んでいる。
お兄さんにそっくり。
優しくて、でも意志の強い表情。
「神崎先輩、覚えてますか? 俺……僕が、レギュラーになりたくてなりたくて、がむしゃらに頑張ってた頃」
「うん……覚えてるよ。
ふふ、笠松くん、"俺"でいいよ」
涼太と練習するようになって、絶対にレギュラー入りするんだと決めた笠松くんの努力は、凄かった。
「っ、すんません。俺、とにかくレギュラーになりたくて、朝から晩まで走って、ボール持って、上手くなりたくて、強くなりたくて」
そう。
でもそれは、1年生の時の涼太そのもので……末路が、見えていた。
「そんな時、神崎先輩が声かけてくれたんですよね。なぜそんなに焦ってるのか、早く強くなりたいのかって聞いてくれて。それで、俺の気持ちを聞きながら、練習時間外のメニューまで考えてくれたんです」
「……そんな、私、大したことしてないよ」
「いえ、ただあのメニューをやれって言われても、俺は多分……こっそり自分でも勝手に追加練習してたと思います。先輩がちゃんと俺の気持ちを聞いてくれて、先輩の気持ちも聞かせてくれたから、安心してついていけたんです」