第75章 ※章名については1627Pをご覧下さい
「……僕たちは信じられないんですけど、兄から聞いたので、それも知っています」
笠松くんは、苦笑混じりでそう言った。
笠松先輩は、おうちで涼太の事をどういう風に話したんだろう。
私も、4月の途中からバスケ部の練習を見に行くようになったから、入部当初の涼太の挨拶は知らないけれど、小堀先輩も森山先輩も、「あれは伝説になるよなー」なんて仰ってた。
笠松先輩も、主将としてそんな涼太を受け入れること、当初はかなり手を焼いたはず。
でも、涼太を変えてくれたのも、そんな涼太の成長を一番近くで見守り続けてくれたのも……笠松先輩だ。
ただの先輩後輩だけではない絆。
きっと卒業しても、大人になっても、バスケ選手を引退しても繋がっていくご縁だろう。
「でも、今の黄瀬先輩は違いますよね。シャラシャラして軽薄そうな外見からは想像出来ないくらい誠実で、カッコ良くて」
「オレ、褒められてんスよね!?」
涼太のツッコミに、周りの皆が笑い出す。
涼太の周りは、いつも笑顔で溢れてる。
それも、彼が持つ大きな才能だ。
「その背中は大っきくて、遠くて。
全然届かなかったけど、手が届くまで追い続けたい。こころから、尊敬しています」
その言葉に、涼太の目が丸くなって……潤いを帯びて、細くなる。
ある日の彼の弱音を思い出す。
"みわ……オレさ、主将なんてできんのかなって、時々心配になるんスよ……ほらオレ、この通りいい加減だしさ、笠松センパイとか早川センパイみたいに、ヒトを引っ張っていけるような力があるとは思えないし……"
"ホント? ……やっぱオレじゃ、チカラ不足な気がするんスよねえ"
"ん、アリガト、みわがそう言ってくれると、勇気出るっスわ。やれるトコまで、やってみる"
「黄瀬先輩は……黄瀬涼太先輩は、最高のキャプテンで、最高のプレイヤーです。先輩と、一緒にプレーできて幸せでした。先輩のチームに入れて良かった。
本当に……ありがとうございました」
2人は固く抱き合った。
涼太、ほら。
あなたは、間違ってなかったよ。