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【黒バス:R18】解れゆくこころ

第75章 ※章名については1627Pをご覧下さい


「じゃー、そろそろ……解散しよっか」

涼太が言ったその言葉は、寂しく体育館に響き、冷たい空気の中へと溶けていく。

もうすっかり日も暮れ、気付けば夜の帳が下りていて。

新世代のレギュラーたちは、すでにその瞳を赤く染めていた。

終わりたくない、まだ、この人達とバスケがしたい。
いつもいつも、別れに伴うこの気持ち。
後輩の成長を嬉しく感じると共に、寂寥感に囚われるのは仕方がないことだろう。
きっと、先輩方は皆、同じ気持ちだったんだ。

「……俺たちから、先輩方へメッセージがあります!」

そう言って、ひとりひとりに向けて、便箋に書いてあるメッセージを読んでくれる。
読み上げるのは、皆の代表……笠松くん。

1年生でありながら、レギュラーとして全国の頂を見たその経験は、何よりの糧になったことだろう。この1年で、見違えるほどに逞しくなった。

読み終わると、それぞれ握手をしたり、抱き合ったり。
残るは、涼太と……私。

「次は……黄瀬涼太先輩。
俺……僕が最初に見たのは、帝光中学時代の、先輩でした」

「マジで? 全中? 会場にいたんスか?」

「いえ、当時僕はまだ小学生だったから、遠出は出来なくて……兄と一緒に試合の録画DVDを観ていたんです」

「へえ、センパイと! 初耳っス」

「中学2年からバスケを始めたとは思えないプレーに……正直、驚きました。オレ、小学校からミニバスやってるのに、なんでこんな人がいるんだろうって……嫉妬しました」

「うん」

「俺たちが努力した何十時間、何十日、何年という時間をあっという間に飛び越えてしまう才能に、嫉妬したんです」

当たり前の気持ちだ。
目の前にある圧倒的な才能に対する、嫉妬。
でも……

「……でも、違った。
黄瀬先輩は、才能だけの人じゃなかった。
誰よりも朝早く来て、誰よりも遅くまで練習して。
掃除や片付けも、率先してやるし、先輩だからとか後輩だからとか関係なく、皆に分け隔てなく接して下さって」

「いやーでもオレ、入学当時なんてナマイキすぎて、笠松センパイに散々シバかれたっスよ〜」

あはは、と笑うのは3年生だけ。
後のメンバーは、信じられないといった様子だ。

これが、涼太が築いた信頼。



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