第75章 ※章名については1627Pをご覧下さい
「わ……!」
包装紙を開けた中、白い不織布の袋を開くと、中から出てきたのは、薄い水色のアクリル板に挟まれた……そう、これはアクリルフォトフレームだ。
フォトフレームには、既に沢山の写真が挟まっていて、幾重にも重なったそれらは、まるで一枚絵のように調和して、フレームを彩っている。
試合中、私が選手にテーピングしている写真、試合に勝って、皆と拳を合わせている写真、抱き合っているものも。
……いつの間に?
「やっぱりプロが撮るのは質が違いますよね!」
そうだ、海常バスケ部には、専属のカメラマンがいる。
イベント時や大会時に、写真を撮ってくれているんだ。
あ、涼太がはちみつレモンをつまんで食べている写真もある。「んぁ〜、生き返るっ!」って喜んでくれるのが、すっごく好きで。
試合前に、私が涼太の手を握ってる写真まである……うう、なんだか恥ずかしい。
中央には、ウインターカップの優勝が決まった瞬間、海常の部旗の下で、皆集まって喜びを分かち合っている写真があった。
泣きながら笑ってる。
皆の声が、聞こえてくるみたいだ。
「前に、神崎先輩に欲しい物がないか聞いた時、皆との想い出があれば十分って言って下さったから……これで、俺たちの事、忘れないでいてくれますか?」
「嬉しい……」
記憶は、どんなに頑張っても、どれだけの記憶力をもってしても、時間と共に薄れていく。
私の場合、ある日突然、消えてしまうかもしれない。
でも、消えないんだって。
輝いた日々は、確かにここにあったんだよって、そう言ってくれているようで。
「忘れない、忘れるわけ、ないよ。ありがとう……」
嬉しい……どんな物よりも、嬉しい。
皆と過ごした時間。
皆と刻んだ歴史。
私の中に色付いた沢山の色の鮮度を保つように、キラキラと輝いていてくれる、宝物だ。
大学でもバスケを続ける涼太には、バッシュケースを。
これも、鮮やかな海常ブルー。
その表面にひしめき合うようにして並んでいるのは、後輩達からのメッセージ。
「ありがと……毎日使うっスわ」
そう言ってケースを撫でた彼の瞳は、いつもの何倍も優しいものだった。