第75章 ※章名については1627Pをご覧下さい
ステージの裾からスポットライトの中に次々と入ってくる人影は……十数人、全員が同じ格好だった。
黄色のウイッグに、トレードマークの左耳のピアス……の代わりに、イヤリング?
全員が海常ユニフォームを身に纏い、その中央の背番号は、7もしくは4。
涼太が1、2年生の頃の番号と、主将になってからの番号。
……そう、全員が涼太のコスプレをしている。
超・キラキラしたスマイル付きで。
それを見た3年生の大半が飲んでいたジュースやお茶を吹き出し、保護者からもどよめきと笑いが起こっている。
「ぶっ、オレっスか!? 超似てるし!」
ステージの上でキレ良く踊る彼らを見て、涼太も、指差して笑ってる。
私も涼太のお母さんも、我慢出来なくて吹き出した。
先ほどまでのしんみりな空気はどこへやら、大笑いだ。
サビの部分が終わると、さらなる笑いと拍手が巻き起こる。
それに続いて、アンコールの声。
「アンコールありがとうございます!」
笠松くんがそう言って、再びダンスが開始される。
全員が縦一列に並んで、ひとりひとり重ならないように少しずつ角度を変え、右手を回しながら上半身を回す独特のダンス。
「オレも入れて!」
涼太がそう言って、列の最後についてダンスを始めたんだけど、皆に誘導されて一番前へ。
私が立っている所は、ステージから最も遠いから、皆の顔がハッキリ見えなくて……涼太の残像がいっぱい出来てるように見えて、もうなんだかとにかく笑えて笑えて。
皆でお腹を抱えて笑った。
「先輩達の笑顔が大好きなので、最後は笑って送り出したかったんです!」
という後輩達の言葉に感動して、結局涙も流す事になったんだけれど。
皆、笑顔。
なんて素敵な出会い。
海常での出会いは、私にとって全て宝物だ。
辛い事を一緒に乗り越えた。
嬉しい事を共有した。
それはやっぱり、特別なこと。
ありがとう。
出会ってくれた皆に伝えたい。
こころからの、ありがとう。