第75章 ※章名については1627Pをご覧下さい
バスケ部の謝恩会は、卒業生というよりは、どちらかというと、今まで選手達を支えてくれた保護者を労う会。
バスケ部OBの方が経営されているレストランを貸し切っての時間。
ここは湘南の海の幸をふんだんに使ったメニューが人気らしく、週末には披露宴を行う事もあるんだとか。
内装はあたたかみのある濃いブラウンで統一されていて、大きな窓から見える庭からは、海岸線も覗いている。
少し高台になっている地形を生かして、景色がかなり良いのも、人気のポイントなんだって。
会場の雰囲気も和やかで、卒業というよりは、どことなく同窓会のような。
普段、試合会場などでしか会えない保護者達の話に花が咲いていた。
うちはおばあちゃんが来てくれ、今は涼太のお母さんと何かお喋りしている。
おばあちゃんは着物姿。
素敵だなあ。
テーブルの上には、料理が所狭しと並べられていて、立食形式だけれども、大人たちは壁際に並べられた椅子に座り、ひたすらお喋りを楽しんでいた。
「みわ、凄かったよ。ばあちゃん、どれだけ誇らしかったか」
「あ、ありがとう」
「みわちゃん、凛として堂々としてて、本当に格好良かったね!」
「わ、あ、ありがとうございます」
おばあちゃんと涼太のお母さんにそう言って貰えて、すごく嬉しいんだけどなんだか照れくさい。
「みわちゃん、体調崩してたんだって? どうなのかしら」
「あの、お陰様で元気になりました。涼太くんには、本当にお世話になって」
涼太は、連日病室に泊まっていた理由をお母さんには話していないらしい。
そうだよね、涼太のお母さんも、あんな事件の事聞いたら嫌な気持ちになるはずだし。
……そんな女と付き合うなんて、って反対する?
「随分痩せちゃったのね。ご飯食べれていないの?」
「あ、いえ、数日前から少しずつ食べれるようになって」
朝は比較的食べれるけど、昼も夜も食べれない事が多くて。
身体は空腹というものを殆ど感じなくなってしまった。
こんなので、大丈夫なのかな……
ううん、弱気になっちゃだめ。
不安定な気持ちの中にひょっこり顔を出したマイナスイメージを、必死に押し殺した。