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【黒バス:R18】解れゆくこころ

第75章 ※章名については1627Pをご覧下さい


その視線に絡め取られて、匂い立つ色香に侵されて……気が付けば、腰が、抜けた。

でも、私のお尻は、冷たい床に落ちる前にふわりと浮かんで。

「あ……」

「なぁにしてんの、大丈夫っスか?」

くすくすと笑みをこぼす姿は、高校生らしくて、でも大人みたい。

たまらなくて……たまらなくて、彼の大きな背中に手を回した。

「ん、みわ?」

開いたブレザーの胸元から顔を突っ込んで、シャツ越しに涼太の鼓動を感じる。

とっ、くん……とっ、とっ、とっ……
少しずつ早くなるシャツの隆起。
きっと私の心臓は、もっと早く打っている。

「涼太……すき」

「ん、知ってるっスよ」

余裕のあるセリフとは裏腹に、涼太は大きく胸を上下させている。

「涼太…………すき」

これ以上、言葉が出て来ない。
胸に何かが詰まったみたいで、もどかしい。

シャツに突っ込んでいた顔の……頬をするりと撫でられ、顎に添えられた手が、その角度を変えていく。

視界に映るものは、白いシャツから愛しいひとの顔へ。
彼の熱を受け入れるために、目を瞑った。

近付いてくる、涼太の気配……
「オイ、まだ残ってるのか?」

「!!」

突然の野太い声に驚き竦み上がった私を庇うようにして、涼太がカーテンの外へ顔を出した。

「あ、スンマセン、すぐ帰るっス!」

「黄瀬か。もうじきに謝恩会が始まるから、移動しろよ。ここも鍵を閉めるから、早く出なさい」

「……ハーイ」

突然現れた先生に驚いて、また腰が抜けそうになった。

そう促されては仕方ない。
ドキドキと胸は落ち着かないまま、私達は渋々と教室から出て行った。

どきん、どきん、どきん。
うるさい心臓と一緒に、移動教室で利用した事のある部屋を次々に回る。

私も涼太も、どこかうわの空だった。

「謝恩会、行こっか」

「うん……」

結局この状態は暫く続き、謝恩会会場についても、内容が全く頭に入って来ないまま、ただただ時間だけが過ぎていった。





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