第75章 ※章名については1627Pをご覧下さい
廊下に出て、手を繋いで歩く。
まだ帰宅せずに残っていたらしい数人の女子が、羨ましそうにこちらを見ているのを感じる。
ちらり、廊下から見た教室。
涼太と同じクラスだった時。
違うクラスだった時。
どんな時も、このドアの窓越しに、彼の姿を探してた。
バスケが生活の殆どだった私達には、実はクラスでの想い出というのはあまりない。
クラスの想い出と言ったら……
「2回もお化け屋敷やったの、ウチらくらいじゃないっスかね?」
「ふふ、ホントだね」
学園祭の、お化け屋敷。
1年生と3年生で、2回もやることになった。
まあ、1年の時は広告配りだけだったから、参加はしていないのと同じだったけど……。
3年生は飲食店が出来るから、皆で飲食店をやりたいって言ってたけど、確か……学祭委員が飲食店をやる為のクジ引きで、ハズレを引いちゃったんだっけ。
懐かしいな、あの時確か、オバケ役で……
「みわ」
私が想い出に浸っていると、いつものように名前を呼ばれて、繋いだ手を引かれて。
私達は既に誰もいなくなっている空き教室に足を踏み入れた。
先ほどまで生徒達がいた教室は、どことなくその温もりを残しているように感じる。
「え、なぁに? 涼太」
涼太はその質問には答えず、窓際まで歩いて行ってしまう。
どうしたんだろう?
窓の外は、グラウンドだ。
ここは3階だから、生徒の顔までは視認できないけれど、周りのトラックで陸上部が、中央ではサッカー部と野球部が練習している。
そして、彼らを見守るように舞う桜の花びら。
八分咲きの応援団。
「わ、綺麗」
涼太は、これを見せてくれようとしたのかな?
彼の意図が知りたくて振り返ると、いつの間にか背景が薄い黄色に染まっている。
これ……カーテン?
私達……カーテンに包まれて、る?
「どうし……」
問おうとして、その琥珀色の瞳がすぐ眼前まで来ているのに気がつく。
咄嗟に息を呑んで、目を瞑ってしまった。
「オバケの中でさ、したっスよね……キス」
すり、と鼻の頭に何かを擦り付けられて。
目を開けると妖しく微笑んだ涼太の姿。
さっきのは彼の唇、だったんだろうか。
キス……されるかと思った……!