第75章 ※章名については1627Pをご覧下さい
滞りなく卒業式は終わり、最後のホームルームを終えて、解散となった。
え、アッサリしすぎ?
だって、別にそんなしんみりするようなものでもねえし……。
みわとの約束もあることだし、まずは謝恩会っスね。
「黄瀬君!」
机に座り、惚けているみわに声をかけようとして、逆に後ろから声をかけられる。
振り返ると、見覚えのない女子。
濃いめの茶髪に、控えめなメイク……"黄瀬君"と呼ぶあたり、多分同級生なんだろう。
「なんスか?」
「あの、ちょっといいかな……」
「ん、ちょっと待って欲しいんスけど」
よくある告白タイムを予感して、みわに声をかける。
「みわ、あのさ……」
彼女も、あきサンや他の友達との別れを惜しむ時間だろう。
「うん、分かった。行ってらっしゃい」
その優しい微笑みに背中を押されつつ、渋々と体育館裏へついて行った。
「ここでいいんスか?」
「うん……あの、黄瀬君……ずっと、好きでした。付き合って下さい!」
右手を差し出して、深々とお辞儀。
テレビ番組のような光景だ。
「ずっと好きで居てくれたってことは……オレがみわと……神崎サンと付き合ってる事もモチロン知ってるんスよね?」
「……はい」
「それなら話が早いっスね。悪いけど、オレは彼女以外と付き合う気はないから」
「……っ黄瀬君は、神崎さんのどこが好きなの!?」
幾度となく聞かれた質問。
いつもは、「アンタに関係ない」ってテキトーに流してる。
今回もそれで……
「私だって、黄瀬君の事、外見で判断なんてしてない!」
ん?
確かにオレは、オレの見てくれだけしか興味がないオンナとは違う、みわが好きだ。
でも、みわに惚れたキッカケは……そんな単純な事じゃないと、思う。
あの日、出逢った日……恐怖をムリヤリ押さえつけてでも壇上に上がるみわを見て、"同類だ"と思った。
オレはバスケで、みわは勉強で、それぞれ"てっぺん"を見ている。
彼女には、どういう景色が見えているんだろう。
目が離せなかった。
それは、そう、一目惚れのような感覚。