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【黒バス:R18】解れゆくこころ

第75章 ※章名については1627Pをご覧下さい


「行ってくるね」

ピリリ。
まるで静電気が発生したかのような感覚。
みわの周りの空気が、変わった。

……オレの好きな顔だ。
集中して、まっすぐ前を向いて。

「ん、行ってらっしゃい。応援してるっスよ」

ちらり、振り向きざまに見せてくれた笑顔。
朝から震えていた彼女を見て心配していたけれど、大丈夫。
みわは、大丈夫だ。

繋いでいた手を離し、オレも体育館へと移動する。

この廊下も、トイレも、全部お別れか。
不思議なカンジ。
でも正直、オレはあんまり感傷に浸るタイプじゃない。
というか、執着心がない。
ヒトにも、モノにも。

みわが初めてなんだ、マジで。

時間があったから、笠松センパイとの連携について思いを巡らせていたら、卒業式はいつの間にか始まっていた。

マイクで、次々と呼ばれる卒業生の名前。
もう、早くもうちのクラスまで来ている。

「黄瀬涼太」

「ハイ!」

わずかにどよめく保護者席や在校生席。
黄色い声も聞こえてくるけど、さすがに卒業式の最中に手を振るわけにもいかず、スルーを決め込む。

オレたちは、呼ばれたらその場で返事をし、起立して待つ。
卒業証書はみわが代表して取りに行くんだ。


「卒業生 総代 神崎みわ」

「はい」

低めの、よく響く声。
出逢った当初は、もっと口の中に篭ったような喋り方だった。

彼女なりに、自信をつけてきたんだろう。
決してギャアギャアと表立って喚くタイプじゃないけれど、強い意志はきちんと宿っている。

カタリとも音を立てずに立ち上がったみわは、オレの横を通ってゆったりとした足取りで壇上へ。

リハーサルではガクガクと震えていた足も、その心配はないようだった。

なんて、キレイなんだろう。

あの時もそうだ。
その凛とした姿に、目を奪われて……
気付けば、こころまで奪われていた。



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