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【黒バス:R18】解れゆくこころ

第75章 ※章名については1627Pをご覧下さい


ぼんやりとそんな事を考えているうちに電車は学校の最寄駅へと到着し、私たちをはじめ、海常の制服姿は次々とホームへ降り立っていく。

この風景も、明日からは見ることがないんだ。
なんだか、実感がない。

いつもの道。
桜並木は、待ってましたとばかりに桃色の花を咲かせている。
満開にはあと少しかかりそうだけれど、もう十分と言っていいほど、花たちは元気だ。
見ているだけでワクワクする、命の輝き。

見えてきた、大好きな学校の、校門。

そこで行われているのは、海常高校卒業式恒例の、コサージュ付け。
私には誰が付けてくれるんだろう。

……スズさんの姿はない。
卒業式にも出席しないんだろうか。

「黄瀬先輩、神崎先輩! おはようございます!」

学校名が書かれたプレートが付いている校門の柱のすぐ横に立っているのは、笠松くんと小堀くんだ。

彼らも来月には2年生。
ウィンターカップの連覇を狙って、新生・青の精鋭は走り続ける。

「オハヨ。笠松クンが付けてくれるんスか?」

「ハイ!」

涼太の胸にコサージュを当てた笠松くんの手が震えている。
当たり前だ。憧れている先輩の胸元を飾る事が出来るんだから。

それを見ていると、笠松先輩が卒業される時に、涼太がコサージュを付けていたのを思い出す。
涙をこらえて、笑顔で。

「神崎先輩、俺が付けてもいいですか?」

「小堀くん、ありがとう」

「ご卒業、おめでとうございます」

小堀くんの鼻頭が赤く染まっている。
それを見て、自分の鼻もツンとするのを感じる。

「みわ、行こ! じゃ皆、サンキュー! また後で、謝恩会で!」

卒業式に出席するのは、2年生と3年生だけ。
1年生とは少しの間、お別れ。

「ハイ!!」

飛び抜けて明るい涼太の声に皆頷く。
彼はその勢いのまま、私の手を取った。



こんなにも濃密な3年間を過ごした事があったかな。ううん、ない。

繋がれた右手が、ずっと熱い。
斜め下から見た彼の横顔も、もう当たり前のように見る事は出来なくなる。

卒業、なんだ。


教室に入ると、荷物を置いてすぐ体育館へと移動するように促される。


……さあ、最後のお仕事だ。

集中しろ。



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