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【黒バス:R18】解れゆくこころ

第75章 ※章名については1627Pをご覧下さい


4月の初旬に涼太が助けてくれたあの件があって、それから何気なく通りかかった体育館でバスケ部の練習を見かけてから、涼太にマネージャーにならないかと誘われるまでの間……

毎日、放課後は体育館に寄るのが日課になっていた。

それほどまでに、海常バスケ部の練習風景は、何もない私にとって魅力的だった。

がむしゃらに走る姿。
響き渡る雄叫び。
信頼できる仲間達との時間。

その中でも、一際輝きを放っていたのは、涼太だ。

バスケを全く知らない私でも分かる。彼の実力は、頭ひとつ抜きん出ているって。
でも、涼太は笑ってなかった。
他のひとがシュートを決めて笑顔になっていても、涼太だけは……まるで、諦めたような、退屈しているような、そんな嘲笑だった。

あんなに素晴らしいプレーなのに、何故だかその背中は、とても寂しいものに思えた。
チームメイトも、すすんで涼太に声を掛ける事はしない。

時々、笠松先輩にバシリと喝を入れられるくらいで、殆ど他の部員との接触もなかった。

どうして?
彼を見るたびに、思っていた。

……歓声を送る女の子達に手を振って応えながら練習をしていた涼太が、ある日から突然、脇目も振らずに練習するようになった。

真剣な表情。
少しずつ、増えていく連携プレー。

後から聞いたところ、黒子くん……誠凛に練習試合で負けたのがきっかけだったそうだけれど、勿論その時の私は知らなくて。

そもそも、それまで負けた事がないって……中学時代、ソフトテニス部だった私には、考えられない事だ。

……いや、そもそも彼と同列に考える事自体が間違っているのかな。
私は、運動神経というものをお母さんのお腹の中に忘れていってしまったのではないかと思うほどの、運動音痴だ。

一応強豪校で真面目に練習を続けた結果、ソフトテニスだけはそれなりに上手くはなったけれど、他の競技はてんでダメ。

そんな私が涼太の事を理解しようなんて事自体が無謀なのかもしれないんだけど、とにかくあの時の私は、"どうして?"ばっかりだった。




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