第74章 惑乱
翌々日、オレたちは朝から体育館にいた。
今日は、卒業式のリハーサル。
式の流れを最初から通して行うという、オレ的には、なんでそんなのやんなきゃなんないのかな、って思うようなイベント。
まあでも、ぶっつけ本番じゃ色々良くないんだろうな。
試合なんていっつもぶっつけ本番なのにな、なんてまた訳のわからないツッコミをして。
久々に、制服を着て登校だ。
これも、明日で終わるんだと思うとヘンな感じ。
みわは、今朝……退院した。
無理するべきじゃないとは説得はしたけれど、みわも新生活の為に色々準備をしなければならないということで、渋々というか。
あのまっすぐな瞳を向けられてしまうと、勝てない。
でも、少しでも良くない状態になれば、すぐに再入院するようにと話はつけている。
今日のリハーサル……大丈夫かな。
実際の式のようにキッチリやるわけではないらしいけど、人前に出て行くのは、本番と同じだ。
卒業生の名前がひとりひとり呼ばれて、オレたちは起立する。
そして、最後の1人が呼ばれた後……
「卒業生 総代 神崎 みわ」
「はい」
……凛とした張りのある声。
立ち上がったみわは、全員を代表して卒業証書を受け取るべく、そのまま壇上へ上がる。
「神崎さん、結局3年間トップだって。すごくない?」
「なんか雰囲気変わったよね、入学式ん時より」
「そりゃあ、やっぱあれじゃない? 黄瀬君と付き合ってたらさあ」
「アレってマジな話? バスケ部のマネやってるから立った噂じゃないの?」
「いや、マジっぽいよ。だってさ……」
「神崎って進学? 就職?」
「進学だろ、この成績で就職は勿体ねーよ」
「なんかエロいよな、後ろ姿とか……」
ボソボソとあちらこちらから聞こえるみわの噂話。
きっと本番では緊張して喋ったりすることは無いだろうに、リハーサルだからといってひどいものだ。
反論したくなる気持ちをグッと堪えて、残りの退屈な時間をやり過ごした。
さっさと終わって、みわと帰ろ。
……でも、リハーサルが終わって教室に戻って来ても、みわの姿は無かった。