第21章 夏合宿 ー4日目ー
練習が終わると、さすがにみんなグッタリしている。
疲労も蓄積している。
今日は、いつもより少しだけ念入りにマッサージを進めていった。
皆が寝付くのも今までより格段に早い。
マッサージを終え、2軍のメンバーの部屋を巡回し終えたところで、廊下で2軍の3年生に声を掛けられた。
「神崎サン、ちょっといいかな?」
なんかデジャヴ。
思わず警戒する私。
2軍の部屋は階が違うため、人通りがなく緊張する。
「ちょっとコレ見てくんない?」
差し出されたのは、スマートフォン。
画面には……
「え……!?」
あの日の、先輩とのキスの写真だった。
「たまたま通りすがって、撮っちゃった。浮気現場」
たまたま……?
嘘だ。女子大浴場の前なんて、用がなければ絶対に通ることなんてないはず。
「……こっち来て」
階に設置されている男子トイレに連れて行かれそうになる。
トイレは部屋にもついているので、ここには人が来ないはず……
「は、離して下さい……!」
なんで、なんで写真が。
「これさあ、黄瀬に見せてもいいかな? お前の彼女、浮気してるよって」
「や、やめて……」
「……じゃあさ、ちょっとだけ我慢して、写真撮らせてよ。お前だけじゃなく黄瀬も脅せるような」
「何を……言って……」
「そこの便器に全裸で座って、脚広げるだけでいいからさ。ホラッ」
物凄い力で突き飛ばされ、個室の中に倒れこんだ。
「なんで、こんなことするんですか……?」
「いや? アイツがお前の事好きだって言うから焚き付けてやったんだよ。無理矢理ヤッちまえばこっちのもんだって。
あとは、現場を写真におさめて黄瀬を脅して、調子乗ってる黄瀬を黙らせることが出来れば、俺は満足」
「そんな……くだらない事で……」
「アァ!? くだらなくねーよ! アイツがいるからいつまで経っても俺はレギュラーになれねえんだろうが!? あんなチャラチャラして努力もしないで即レギュラーなんて、ふざけんじゃねえぞ!」
「……ふざけてるのは貴方でしょう!? チャラチャラしてる? 努力しない? どこ見て言ってるの!? 黄瀬くんの事……何にも知らない癖に、いい加減なこと言って逆恨みしてんじゃないわよ!」
みるみるうちに先輩の顔色が変わっていく。
私だって、そんな事言われてもう黙っていられない。