第74章 惑乱
きちんと文になっていたり、単語が途切れ途切れに出てきたり。
早口になったり、ゆっくりになったり。
カウンセリングでも、ここまで話していないんじゃないだろうか。
手は氷のように冷たく、ずっと小刻みに震えている。
みわの言葉を、オレなりに頭の中で組み立てる。
みわは着ているものを剥がれ、直ぐに輪姦モノの……撮影が始まった。
彼女の小さな口にナイフがあてがわれ、無理矢理、足を開かされる。
前戯など勿論ある訳もなく、1人目の男が挿入した。
「ごめん、なさい……結局、何人にされたのかは、分からない、の……」
「いいんスよ、みわ。無理に思い出さなくて」
「挿れられる、と、痛くて、とにかく、痛くて……あ、あぁ、うあ、あ」
「みわ」
みわは、両手で腕を抱えて、ベッドの上でうずくまってしまった。
「やめて、いたい、って、でも、声、出なくて、やだ、って、私、思って、たのに、」
「うん、うん」
そっと抱きしめると、その身体がぶるぶると震えていることに気づく。
「あ、あー、ああ、うぅ、あ、ああ」
「みわ、大丈夫、もう終わった。大丈夫、大丈夫」
……みわは、行為が始まってから少しの間、記憶があやふやになってしまっているようだ。
しかし、その曖昧な記憶を補完するように、警察での映像の確認作業があった。
画面の中のみわは人形のようで、表情もなく、虚ろな瞳は1点を見つめたまま、ただひたすら乱暴な律動に揺らされているだけだったという。
そこまで見てパニックになってしまい、その先はまだ見れなかったらしい。
当然だ。
なんでそんな確認をしなきゃなんないのか、怒りがふつふつと湧き上がってくる。
「……私、言わされた、の」
「……」
"なんて?"って聞き返していいのか。聞き返さない方がいいのか。
でも、無言は良くない、だろう。
「……うん?」
やっと、それだけ返せた。
「アンアン喘げ、って。気持ちいい、いっちゃう、って言え……って」
画面の向こう側のみわは、言われた通りに、無表情で……大きな声で喘いでいたという。