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【黒バス:R18】解れゆくこころ

第74章 惑乱




「……みわ」

「は、はい」

う、この、真っ直ぐ射抜くような瞳。
嘘なんて、その場の誤魔化しなんて全部無に帰してしまうような、強い視線。

「こっち、来て」

洗面台の照明をパチリと消し、私の腰を抱いて涼太は歩き出した。

そのまま私のベッドまで戻り、端に座るよう誘導すると……また、キス。

唇からじわりと広がる快感が腰まで到達して、ぶるりと身震いしてしまう。

「……っ……」

優しい愛撫のような口付けに、声を上げないようにするのが精一杯で。

その行為から、涼太の気持ちを推し測ろうとしてもうまくいかない。

「みわ」

「っ、はいっ」

まるで、卒業式の予行練習だ。
私のその勢いのある返事に、涼太は目を丸くしてから……優しく細めた。


「昨日も言ったけどさ、みわは今までと何にも変わんないっスから」

「……」

そう言ってくれるのは、本当に嬉しい。
……でも、実際に、私は、あの男達に……。

もう、起こってしまった過去は変えられない。

涼太は、あんな出来事、無かった事にしたいかもしれないけれど……もう、変えられないんだ。

どうしたらいいのか、分からなくて。
考えれば考えるほど、頭の中がぐちゃぐちゃに絡み合って。

涼太、ごめんなさい。
なかった事に、したいよね……。


「でもオレは、あの事件をなかった事にしたいわけじゃないんスよ」

「……え?」

じゃあ、どうして?
どう……思ってるの?

声にならないこの声が、何故か涼太には届いている気がして。

「オレはさ、みわに同情してるわけでもないから」

「……あり、がとう」

同情は……辛い。

この子は酷い事をされた、可哀想な子なんだって、そういう態度をされるのが、死にたくなるほど辛かった。

……実は、最初に担当して下さったカウンセラーの方と相性があまり良くなくて、変えて貰った。

あの、哀れむような、可哀想な子を見るような視線に耐えられなくて。
被害妄想かもしれないと思っても、拭い去れなくて。

そんな風に思う自分も、大嫌いで。



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