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【黒バス:R18】解れゆくこころ

第74章 惑乱


深夜に、目が覚めた。
パチリと、自然に。
眠気も残っていない。

涼太は相当疲れていたんだろう、私が身じろいでも、腕の中から抜けても、安らかな表情で眠りについていた。

この個室には、トイレもシャワールームも完備されている。

トイレに入って下着を確認して、ため息。
……来ない。

大丈夫、大丈夫だと分かっていても、もしかしたらという想像ばかりが頭をよぎって。

考えすぎると、かえって良くないんだ。
考えないように、考えないように。

トイレを出て、ベッド横の棚を開ける。
ライトの向きを変えて、明後日にある、卒業式のリハーサルの詳細が書かれたプリントを読む。

ふぅ、と深呼吸ひとつ。
大丈夫。

渇いた喉をペットボトルの水で潤して、何気なく冷蔵庫を開けた。

目に入って来たのは、涼太のお土産のマンゴーゼリー。

あの甘さが欲しくなって、袋の中からスプーンと一緒に1つ取り出した。

汁が飛び散らないように気をつけてフタを開けて、ちゅるり、ひとくち。

果実をそのまま食べているような濃厚な旨味が口の中にほわんと広がる。

「おいしい……」

思わずそう漏らしてしまい、涼太を起こしてしまってないかを慌てて確認する。
……変わらず浅く上下する胸を見て、ホッ。

食べさせあった昨日の甘い時間を思い出すと、頬が緩む。

うん、しあわせ。

大丈夫。

カップに半分ゼリーを残したまま、次はスマートフォンで賃貸情報サイトを開く。
病室で携帯が使えるのはありがたい。

もう、今月末までには新しい家に入居しないと。

本当は2月のうちに借りておこうと思ったけれど、あんな事があって……。
恐らく、チェックしていた物件はもう借り手が付いてしまっているだろう。

東京とはいえ、都心からはだいぶ離れている。
出来るだけ安い部屋を借りて、近くでバイト先を見つけて……。

やる事は沢山ある。

不安に押し潰されてる場合じゃない。

こころが折れてしまわぬように、強く拳を握り締めた。



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