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【黒バス:R18】解れゆくこころ

第74章 惑乱


「……まだ、足りねぇっスわ」

「私ばかり食べちゃったもんね。もうひとつ、開ける?」

冷えたゼリーはとても美味しくて、ついつい私が食べさせて貰ってしまって。

もっと涼太にも、と思って冷蔵庫に手を伸ばすと、突然彼の手に腕を掴まれた。

「涼太、どうし……」

たの、と最後まで言う前に、また、しりりんと鈴の音。

揺らしてもないのにどうして鳴ったのかと、顔を上げてそちらに一瞬目を奪われているうちに……涼太の唇が……私のそれと、重なった。

思考回路はエマージェンシーコールを受け、緊急停止。

「ん、っ」

ちゅ、ちゅと吸い付くように、啄むように触れられて。

突然の事で息を止めてしまっていた事に気付き、慌てて呼吸を再開する。

「っは、ん」

少しだけ酸素を取り込むお許しが出て、はぁはぁと素早く呼吸をすると、またすぐに合わさる唇。

「ん……ぅ、ん」

「みわ」

頭から足のつま先まで、ジンと痺れる。
お腹の奥の方が、ジリジリと焼けるように熱い。

どろどろに甘い生クリームみたいな、キス。
唇の熱で、溶けてしまいそう。

「っ、ん、ちょっ」

ちょっと、待って。

今度はその言葉ごと、呑み込まれていく。
あまりに気持ち良くて、もう何もかも、どうでも良くなってしまいそうで。

でも、頭の片隅でまだ冷静な自分が、だめと言っている。

だめ。
だめ。
だめ。
だめ。

今の私じゃまた、涼太まで、汚してしまう。

「りょ、た、だめ、やめ……っ」

その逞しい両肩を掴んで制止しようとすると、キスは中断されて、涼太が覗き込んできた。

「……痛む?」

何のことを言われているのか、分からなくて。
それが、口の中の傷の事を言ってるんだと気付いた瞬間、心配させまいと慌てて訂正する。

傷はもう、痛まない。

「そうじゃ、なくて……っ」

そこまで言って、"痛い"と嘘をつけば涼太はやめてくれただろうという事に気付く。

でも、もう手遅れで。

再び重なる熱。

「りょ、……っ」

抗議をしようと開いた口にすかさず侵入してきた甘い舌が、理性を容易に溶かしていった。


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