第20章 夏合宿 ー3日目ー
今の……最後の……黄瀬くん、まさか……知ってる……!?
でも、どうして?
どうやって?
……だから怒ってたんだ。
私に、怒ってたんだ。
朝見た黄瀬くんの横顔を思い出す。
背筋が凍るほどの、怒気。
でも、今更言うのも……言われたから仕方なく言うって感じで嫌だ。
こんなことなら、最初から相談しておけばよかった……
でも、ただ私の様子がおかしいから、ああやって言っただけかもしれない。
どうすればいいのか正解が見つからなくて、後悔に押し潰されそうだ。
……明日ちゃんと、話そう。
やっぱり隠したままというのが一番不誠実だと思う。
この選択は間違いかもしれないけど……
余計に傷つけるかもしれないけど……
でも、もう嘘を吐きたくない。
もう一度、あの笑顔が見たい。
部屋のカギをかけにドアまで移動した時、下着の異変に気が付いた。
自分でも驚くほど、ぐっしょりと濡れていた。
もう履き続けられないくらいに。
恥ずかしい……黄瀬くん絶対、これも見てたはず。
こんな嫌なところばかり見せてしまって、もう嫌われちゃったかもしれない……
怖い……!
黄瀬くんに、メールを打った。
"ごめんなさい。明日、ちゃんと話します"
返事はすぐに来た。
"分かったっス。また、明日。おやすみ"
距離感を感じるメール。
下着を替え、自己嫌悪に陥っていると、部屋をノックする音が聞こえた。
「……はい」
「神崎? 笠松だけど」
「あ、笠松先輩。お疲れ様です。どうかなさいましたか?」
「ちょっと先に伝言だけしておきたくて。筋痛めてたアイツ、いるだろ」
……私にキスしてきた先輩だ。
「なんか体調も優れないとかで、明日朝一で先に帰らせる事にした。
もう明日も4日目だし、無理して残ってもな。
だから朝、勝手が違うかもしんねーけど、もしなんかあったら教えて」
「……体調が、優れない? さっき、お部屋を巡回した時には、特に……」
「あ、別にオマエの報告漏れとは思ってない。
寝る前になって悪化したのかもしんねーしな。とりあえず、それだけ」
「しょ、承知……しました」
「……黄瀬が来たのか?」
「えっ、ハイ」
先輩は赤面してしまった。
「いや、なんでもねー。……後で鏡見とけ」
「……? 分かりました。お休みなさい」