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【黒バス:R18】解れゆくこころ

第74章 惑乱


「これやったら、ほら、スプーンで"あーん"も出来るやろうしね!」

「いいっスね!」

ショートカットで柔らかい笑顔の彼女は、愛に溢れていた。
眩しいな、と思った。

旅先での貴重な出会いに、感謝。


オレは、彼女へお礼を告げ、急ぎ会計を済ませるために、レジへ走った。


「おう、黄瀬」

息を切らしながら店を出て、集合場所へ向かおうとすると、その方角からのんびり歩いてくるのは笠松センパイ。

オレを呼びに来た……というわけでもなさそうだ。

もうすぐ、搭乗時間だよな?

「あれ、センパイ、どしたんスか?」

「帰りの便、1時間間違えてたんだと」

「……へ?」

よくよく聞くと、合宿の書類に書かれていた帰りの搭乗時間が間違っていたそうで。

というか、あまりにタイトなスケジュールになるから、後から変更したんだそうだ。
なのに、書類の修正を忘れていた、と。

変更した事務担当すら忘れていたというから、重症だ。

なんだよ、時間あったなら、さっきのヒトにゆっくりお礼言えたのに……。

あんなに快く教えてくれたのに、軽いお礼しか出来なかった事が悔やまれる。

「オマエ、1時間どうすんだよ。俺と小堀は適当に店にでも入るけど」

「ちょっとだけ電話してくるんで、後から追っかけていいっスか?」

「おう。あそこの角の店にいるわ」

「了解っス!」

センパイと別れて、スマートフォンを取り出した。

"神崎 みわ"

画面に表示された名前すら愛しいのだから、オレも相当重症かな。

1コールで繋がる電話。

『もしもし』

「あ、みわ?」

明るい声。
耳から入って、すっと全身に染み込んでいくよう。

『お疲れ様、涼太。これから飛行機で移動?』

あー、ずっと聞きたかった声に、頬が緩むのを抑えられない。

「フライトの時間間違ってたみたいでさ、1時間ぽっかりあいたトコ」

『そうなんだ、大変だね』

「明日、会えるっスね」

時間も遅くなるだろうし、みわの病室に行くのは明日を予定してる。

『お話、楽しみにしてるね。早く、会いたいな』

珍しいみわのその発言に、オレの目尻はどこまでも下がっていった。

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