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【黒バス:R18】解れゆくこころ

第74章 惑乱


「出たよ、この子の天然発言」

「えーっ、天然じゃないよ!」

驚いたように、照れたように、困ったようにと、くるくる表情が変わる。

「天然の子は、皆そう言うんだって! だって、どこが強いのよ、好きな人の好きなトコも言えないなんてさあ」

「そうじゃなくて……どこそこが好きって、じゃあその好きな部分がなくなったら、好きじゃなくなっちゃうの? 違うよね?」

「んー、それはまた別の話じゃない? どこが好きかも言えないなんて、ヘンだって!」

多分一生噛み合わないであろう会話。

まあ多分、このオネーサンたちは、オレの見てくれが好きになって、もし付き合ったとしてもオレが激太りしたらソッコー別れるんだろうな。

その程度だと、今の時点で分かる。

「……"好き"って、そういうことじゃないよ」

伏せた瞳に、もしかして泣く?なんて焦っていたら、彼女はふんわりと微笑んだ。

みわの、幸せそうな笑顔が脳裏に浮かんだ。



ああ、多分このヒトにも、大切なヒトがいるんだ。

オレも、こんな風に笑ってんのかな。






「さっきは、すみませんでした」

宴会場での集まりはようやくおひらきになり、少し外の風に当たりに、正面玄関を出たところのベンチで座っていると、さっきの彼女がやってきた。

既にあちらこちらの電気は消灯されており、補助灯のようなものがぼんやりとあたりを照らして、なんだか幻想的。

「何も知らないのに、知ったような事ばかり言って」

ペコペコと頭を下げる姿も、みわとなんだか重なって。

さっきから、このヒトを見るたびにみわに会いたくなる。

「いいんスよ、別に気にしてないんで。オレも同じ事思ってたし」

「彼女さん、いいですね……こんな風に想って貰えて」

おや?

「彼氏とケンカでもしたんスか?」

「かっ、彼氏!? いません、いません!」

「あれ? そうなんスか? オレはてっきり」

「かたっ、片想い中です! 付き合ってるとか、そーゆーんじゃないですから……!」

へえ、意外。
あんな風に想われてたら、相手も幸せっスねえ。

「オイ黄瀬」

彼女の後ろから、聞き慣れたその声。


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