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【黒バス:R18】解れゆくこころ

第74章 惑乱


みわだ。

慌てて宴会場を出て、柱の陰に身を寄せる。
手の中のスマートフォンの画面に表示された愛しい名前を、優しく撫でた。

「もしもし!」

『あ、お疲れ様。私、みわです』

いつもの声、いつものセリフ。
何故かいつも最初は敬語なみわ。

「はは、分かってるっスよ、お疲れ!」

『ごめんね、今、時間大丈夫だった?』

明るい声に、ホッとする。
余裕があるんスかね、今日は。

「これから風呂ってとこで捕まって、今センパイたちの飲み会に付き合わされそうになってたんスよ〜」

『わあ、大変そう』

「1、2年は未成年だし、絡まれながらお酌すんのが仕事みたいなんスけど……オレあーゆーのニガテ」

ふふ、そうだよね、とスピーカーの向こうからは笑い声。
また一言二言話して、笑い合って。
……ふと、気が付いた。

みわ、ここ最近で合宿中にみわから連絡してきた事、なかったよな。
集中しろって、私の事は後でいいからって。

もしかして、余裕があるんじゃなくて……
……もう限界で、耐えきれなくて、かけてきたんじゃないか?

「みわ、体調はどう? 気分は?」

『……あ、うん』

「嫌な思いしなかった? 大丈夫っスか?」

『…………だいじょうぶ……』

少し、声が濡れてくる。
鼻が詰まっていくような。

「みわ」

聞いていいならさ、なんでも言って。
そんな気持ちを込めて、ありったけの愛しさを込めて。
その名前を、呼んだ。

『……大丈夫、嫌な思いとか、してないから。ただちょっと、疲れちゃって、声……聞きたくなった、だけ』

すん、と鼻をすする音。

「そっか。みわもお疲れサマっスね」

みわが欲しいのは同情じゃないはず。
コタツのようにポカポカと包み込まれて、甘やかされたいわけでもないはず。

みわは、オレに負担をかけまいと思ってる。

「オレたちのペースでさ、のんびりいこ」

無理強いはしない。
どうだったのか、気になるけど……みわの気持ちを最優先で。

『うん、ありがとう……ありがとう、涼太』

オレは、雨が酷くなってきたね、ちょっとそこで雨宿りしていこう、そんな感覚で頼って欲しいんだ。



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