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【黒バス:R18】解れゆくこころ

第74章 惑乱



病室に戻ったみわは気丈に振る舞ってはいたが、その顔には疲労の色が濃く出ていた。

カウンセリング。
"とか"と言っていたから、カウンセリングに限らず、そういうものを受けてみようという事だろう。

みわの気持ちが、前を向いた。

でも、事件の事を思い出しながら話す事が、どれだけの負担になるのだろうか。

みわはまだ、警察の事情聴取すらまともに応対出来ていない。

先日から警察の人間が病室に来て(スーツではなく、カジュアルな服装で来て貰うようにしてある)話を聞こうとしても、みわは取り乱してしまい、とても話が出来る状態ではなかった。

本当に本当に、無理だけはしないで欲しい。

でも、みわがようやく出来たこの決断は、絶対に彼女を前進させる。

あの強い瞳が、そう断言させるんだ。

オレも、みわが迷った時の道しるべになれますように。



「涼太……準備、しなきゃでしょう。遅くならないうちに家に戻った方が、いいよ」

少し長めの合宿だ。
必然的に荷物も多くなる。

「うん……そうさせて貰うっス」

「私は、大丈夫だから」

ベッドの中のみわは、ふんわりと微笑んでいる。

まるで、そのまま水に溶けていなくなってしまいそうな、そんな儚さ。

もう一度だけ、暫く会えないんスから、と、こころの中で言い訳して再びみわを抱きしめた。

「みわ、大丈夫じゃなくていいから。辛くなったら、何時でもいいから電話して」

「……うん、ありがとう……」

みわの手は、震えていた。





病院を出ると、スマートフォンを取り出し、まずは赤司っちに連絡をした。

「あ、モシモシ赤司っち? オレさ、明日から……合宿、なんスよ。……うん、うん、そーなんスわ……ん、アリガト」

頼もしい友人。
彼には何から何までお世話になってしまっている。

続いて、笠松センパイに。

「黄瀬っス。今日は……ありがとうございました。明日、行きます。……ハイ、ハイ、……ハイ」

"寝坊すんじゃねーぞ"いつものぶっきらぼうな物言いが、すごくあたたかかった。


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