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【黒バス:R18】解れゆくこころ

第74章 惑乱



風が、出てきたっスね……

汗が冷える前に着替えろって、みわに怒られるかな。

でも、まだ、今はこのままで……

腕の中のみわは、もそ、もそ、と動き、遠慮がちにオレの背中に手を回した。

ごくり、唾を飲む音がして、それからギュッとその手に力が込められる。

「ごめん、汗臭い?」

こんな寒い半屋外だというのに、センパイとのバスケで大量の汗をかいた。
こんなに密着したら……

そう心配したけど、みわは顔をオレの胸元にうずめたまま、首を横に振った。

「……ん、そっか」

するり、柔らかい髪をひと撫で。
するり、するり。

そこから暫く、会話はなかった。
ひたすら、お互いの体温を分け合うように。



「みわ……センパイに、事情……話したんスか」

じっくりと間を置いて、さらに一拍。
こくんと、今度は縦に首が振られた。

「うん……涼太が誤解されるのだけは、嫌だったし」

「ごめん、辛いこと話させて」

どのように話したかは分からないが、あんな記憶、二度と思い出したくもないハズなのに……。

ごめん、みわ。

「大丈夫……笠松先輩のこと、信頼しているから」

……センパイがセンパイで良かった。
こころからそう思った。

「みわ、そろそろ戻ろうか」
「涼太……」

「ん? どしたんスか?」

「明日から、合宿……行く?」

「うん……行って来るっスよ。ごめん、心細いかもしんないけど」

オレはオレのやり方で、みわを支える。
寄りかかるのではなく、前を走って、みわを引っ張るかのように。

「私もね、頑張る……から」

ギュッ、更に力がこもった、背中に回された腕。

「頑張んなくていいんスよ、ゆっくりで、無理だけはしないで」

「私、カウンセリング、とか……受けてみようと思うの」

それは、みわが今まで、ずっと避けてきたもの。


風が、強くなってきた。
真横から吹きすさぶ風は、追い風に変わってくれるだろうか?



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