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【黒バス:R18】解れゆくこころ

第74章 惑乱



「みわ……」

私の名前を呼んで、立ち上がろうとした涼太の頭に、笠松先輩のゲンコツが飛んだ。

「いっ、いってぇ〜! 何するんスか!」

「いいか、オマエはちょっと落ち着け」

「落ち着いてるっスよ! これ以上ないくらい落ち着いてるっス!」

先輩は、そんな涼太を一瞥してため息ひとつ。

「いいか、黄瀬。……神崎もだ、聞け」

「はい」

「……何スか」

「オマエらは、お互いを見過ぎだ」

お互いを?

「見過ぎって……どういう事っスか」

「そのまんまの言葉だよ。オマエらは、今、向かい合って、見つめあってんだ」

涼太は、先輩の言葉の意図が掴めなくて、眉をひそめてる。

「わかるか、黄瀬」

「わかんねぇっス」

「だろうな」

「ひどい!」

……なんとなく、分かる。

「オマエらは……黄瀬は神崎を、神崎は黄瀬の事だけを見てんだよ、見つめ合ってんだ」

ふたりとも、続く言葉を待つ。

「それでだ。そうやって見つめあったまま前に進むと、ぶつかるだろ。
そうすると、どっちも傷付くんだ。
おまけに、そのまま進むと、もうどんどん相手は見えなくなって、離れちまう。
だからあぶねーんだよ、お互い見つめ合ったままこうして進んでいくのは」

その言葉はストン、と、こころに落ちてきた。
さっきまでクエスチョンマークを飛ばしていた涼太も、それは同じようで。

「お互いにとって、そして自分にとって何が最善なのか、よく考えろ。相手しか見てなかったり、相手にもたれかかってるだけじゃ先に進めねえぞ」

「センパイも、なんか経験……あるんスか?」

笠松先輩は、自嘲するようにフッと笑った。

「いや、生憎まだだな。これはオレの尊敬するヒトの言葉だ。受け売りみたいで悪ぃけど、今のオマエたちにピッタリの言葉だと思ってよ」

そう、そうなんだ。
私たちは、お互いを見つめ合いすぎてる。

2人で、同じ方向を向かなくては。


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