• テキストサイズ

【黒バス:R18】解れゆくこころ

第74章 惑乱


『オマエさ、捨ててくるモンが何かを、分かってんだよな?』

「ん? 捨てて? オレ、何にも捨ててないスよ?」

『黄瀬』

……別に茶化してるつもりはないんスけど……

「……あー、海外に行くチャンスってヤツっスか?」

『そうだ。分かってんじゃねえか。
行くならこのタイミングだって、分かってんだろ』

海の外へ向かっていくタイミング。
高校生でまだ国内にいる事自体、非常に遅れているという事は、理解してるつもりだ。
このオレが珍しく、散々悩んだ問題。

「分かってるっス」

『……それが分かった上で、ウチに来るって決めたんだな……?』

センパイにしちゃ、しつこい物言い。
……このヒトは、オレの能力をきちんと把握した上で、この先を心配してくれてるんだろう。

「そうです」

オレは、決めたんだ。
笠松センパイに、てっぺん見せるって。
2年前と同じ、笠松センパイのチームで。
エースとして。

『分かった。もう聞かねー。
俺はいずれ、あのチームのキャプテンになる。
絶対になってやる。
目標はただひとつ、インカレ制覇だ』

「っス」

電話だったけど、無意識に拳を振り上げた。
きっと、センパイも、同じだろう。

スマホの向こう側にいるセンパイと、拳を合わせた。




そのセンパイが、今、目の前にいる。

数日前、センパイに言った。
オレ、バスケ出来ないって。
もう、やめるって。
スンマセン、って。

センパイは、頭ごなしに反対したり、怒ったりしなかった。
数秒考えて、すぅと息を吸って、言った。

ひとりで抱えんじゃねー。
相談しろって。

その声を聞いて、怖くなって、焦って通話を終了させた。

怖かった。
揺らいでしまいそうだった。
決意が。




「そ、そうっスよ、冗談! 冗談に決まってんじゃないスか! センパイ、オレのことよく分かってくれてますよね?」

「ああ、分かってる。
オマエの事なら、よく」

ほら。
土台から揺さぶってくるような
その、真っ直ぐな
瞳。


/ 2455ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp