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【黒バス:R18】解れゆくこころ

第74章 惑乱


昨日、みわと訪れたばかりの屋上庭園。
今日も、人気はない……

……と思っていたのに、バスケゴール横にあるベンチには、人影が。

きっと、ここに入院するようなヒトだ、誰にも会いたくはないだろう。オレたちみたいに。

「みわ、先客っスね。戻ろう」

みわの肩を抱いて回れ右を促しても、彼女は動こうとはしない。

その目線の先を一緒に追いかけると……

「笠松、センパイ?」

よく知ったそのツンツン頭。
ガンコ……いや、意志の強そうな眉。
間違いない。
笠松センパイ、だ。

濃い目のグレーのダウンコートに、カーキのチノパン。
黒いブーツを履いている姿はなんだかすっかりオトナで。

「よォ、黄瀬」

「センパイ、なんで……」

「オマエ、あの電話での話は冗談だったんかよ」




……あの、電話。

あれは、アメリカ出発の前日のことだったか。
オレのスマートフォンに、珍しい人物から着信が入ったのは。

「モシモシ! 笠松センパイっスか!? 久しぶりっスね!」

『黄瀬、オマエ……うちの大学に来るって、マジかよ?』

あ、遂にバレたか。

「なぁんだ、センパイにはヒミツにしてたんスよ〜。誰っスか、バラしたの」

『監督から発表があったんだよ、スゲエヤツが入ってくるって』

「いやー、オレって有名なんスね! 照れるっスわー」

『……』

おっと、センパイの沈黙。
オレ、なんか怒らせる事したか……?
まだ入学もしていないというのに、早速シバかれそうな予感。

『っつーことは、マジなんだな……?』

「え、あ、ハイ、そうっス……けど……」

『なんでまた、ウチなんだよ』

「え」

……これ、言ったら引かれるやつか?
オレらしくないよな、この理由……
いやでも、

『オイ黄瀬』

……ダメだ、このヒトには勝てねぇスわ。

「借りを返せなかったから……っス。
センパイ達と頂上、見てねえから」

『……』

マズイこと……したか?
オレを叱る時には、バカヤロウ!と遠慮なく言うのがセンパイだ。

こんな風に言葉に詰まる事って珍しくて、なんか相当ヤバイ事でもやったんじゃないかと焦る。


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