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【黒バス:R18】解れゆくこころ

第74章 惑乱


ぼんやり、まぶたの向こうが明るい気配。
空気が動いている感覚。

重いまぶたをなんとか開こうと、意識を集中させる。

「みわ、おはよ」

「……おはよう、涼太……」

白い天井をバックに、視界に入ってきたのは涼太の姿。

頬に触れてくれた手が、温かい。
彼の手とともに触れたニットのセーターも、ふんわりと柔らかかった。

……大好きな、ひと。
なんて、贅沢なんだろう、私。

涼太が来てくれてから、眠れるようになった。

彼が病室に泊まってくれるようになってから、もうすぐ1週間が経とうとしている。

その間、彼は絶対に私から長時間、離れようとはしない。
きっと、私が間違いを起こさないかと心配なんだろう。

……つまり、涼太はもう、1週間もバスケをしていない。

ダメだ、絶対に。
彼の足を引っ張るようなことは。

そう思って、涼太にはもう帰って欲しいと伝えても、聞く耳を持ってくれない。

私が、しっかりしないから。
一番、やっちゃいけないことをしてる。

分かっている。
分かっている、つもりだった。

「ちょっと、飲み物取ってくるっスね」

「あ……大丈夫、だよ」

そう言った私の声は、ひどく掠れていた。
突然入ってきた酸素に、思わずゲホゲホとむせる。

「すぐ戻ってくるから。すぐ」

そう言って、彼は走って行った。

ドアが閉まる音が遠くから聞こえてすぐ、私の携帯が震えた。メッセージアプリがメッセージの受信を知らせたんだ。

小堀先輩とのトークルームに、受信を知らせる数字が出ていた。

珍しい。
以前、IDの交換はしたけれど、実際にこのアプリで連絡が来るのは僅か数回だった。

大体先輩は、直接電話をかけてくる方だったから。

1、2、3……数字はどんどん上がっていく。
よく利用される、喜怒哀楽を表現したイラストなどの"スタンプ"が使用されたのだろうか。
それとも何か、急ぎの用事?

"やあ神崎、久しぶり。
突然ごめん。元気してる?
笠松がさ、黄瀬に連絡がつかない
って言ってるんだけどさ、アイツ
何処にいるか知ってる?"

"明後日から始まるウチの大学の
合宿に参加する事になってたんだ
けど、それに関する必要事項やら
なんやらの連絡も何にもなくて、
困ってるみたいなんだよ。"

次に表示されたメッセージに、
どくん、と心臓が跳ねた。



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