第74章 惑乱
頼んでもいないのに、頭ん中が色んな情報だらけになって、もう脳みそは悲鳴をあげてる。
でも……
「難しいことは分かんないっスけど……みわの初めての男はオレってことに、変わりはないんで」
それが、素直な気持ちだった。
誰がなんと言おうと、そこは変わらない。
ふたりで過ごす、あの、胸の真ん中がポカポカとあったかくなるような感覚、幸せな気持ち、愛しいと思う気持ち、あれが全部だ。
みわ以外とは絶対にあんな時間にはならない。
みわも、そう思ってくれているはず。
思った事を言っただけ。
なのに、お祖母さんは泣いていた。
過去は変えられない。
変える必要もない。
過去があるから、今があって、未来があるんだ。
前だけを向いていけばいい。
そう、伝えたい。
でも、今のみわには、効かないだろう。
そんなに簡単な問題じゃない事もわかってる。
ああ、さっきからずっとこの堂々めぐりだ。
そばにいてあげるしか出来ないのが、悔しい。
寄り添っていたいと、そう考えてはいたけど、こんなに自分が役立たずとは思わなかった。
そこから数日間、オレはみわの病室で寝泊まりした。
みわは、目を合わせれば申し訳ないと謝り、悪夢に怯え、人に怯えていた。
相変わらず食事は全く喉を通らず、遂に彼女の細い腕には点滴の針が刺される事になった。
散歩を勧められるも、ベッドから出ることもままならず、足腰は弱っていく一方。
ぼんやりして、会話にならない事が多い。
シャワーを浴びに行くと、オレや看護師さんが呼びに行くまで、惚けたようにただただ身体を洗い続けていた。
オレがいなきゃ。
オレが支えてあげなきゃ。
こんな状態のみわ、放っておけない。
一緒の大学にすれば良かった。
みわと一緒に居るために、バスケを……やめようか。
やめたほうが、いいんだろうか。
そんなことを考え始めていた。