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【黒バス:R18】解れゆくこころ

第74章 惑乱


「ごめんなさい……また、泣いちゃって」

みわは、枕元に置いてあったティッシュの箱に手を伸ばして、ぐしぐしと鼻を拭いている。

その仕草ひとつとっても、可愛くて。
ギュウギュウと抱きしめたくなるけど、それは今、ガマン。

「いいんスよ、オレの前では泣いて。
他のひとには言えない事も、出来ない事も、オレにはさ」

本心を言っただけなんだけど、みわは更に泣いてしまった。

子どもをあやすようにポン、ポンと背中を叩いていると、その内に、みわはうとうとと微睡み始めた。

「……んん」

「寝ていいっスよ、オレ今夜はずっとここにいるから」

「……まって……」

「ん?」

みわは、ゴシゴシと目をこすって、折角訪れた眠気を振り払ってしまう。

ベッドの隣にある机の引き出しを開けると、彼女の手提げ鞄が入っていた。

ゴソゴソと中を探り、出てきたのはテーピング用のテープ。

もしかして……

「涼太、ベッドに座って?」

やっぱり。

「みわ、そんなの後でいいっスよ。まずは身体休めて……」

「だめ。涼太」

うっ。
みわのバスケモード。
まっすぐ、射抜くような瞳から目が離せない。

「んじゃ……お願い、するっスわ……」

「足、伸ばして座ってね」

何故か、みわのベッドを占領するオレ。

みわは、オレの足首を立てながら必死にテーピングを施してくれている。

相変わらずその動作にはムダがなく、仕上がりも美しい。
巻き終わってから動かしてみても、殆ど可動域に影響がない。

「みわさ、器用っスね。気付けば色んな巻き方知ってるけど、テーピングってどうやって覚えんの?」

「器用なんて……逆だよ。私、不器用だから……。テーピングはね、お世話になってる整骨院の先生に教えて貰うのがメインで。練習もさせて貰って、後はひたすら自分の足で練習、かな」

素人がこんなに上手く出来るようになるまでって、どれだけ練習すればいいんだろう。

「症状と巻き方、沢山種類があるから、もっともっと覚えたいな」

そうだった。
あまりに、当たり前のようにしてるから、忘れてた。
みわは、努力の天才だ。


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