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【黒バス:R18】解れゆくこころ

第74章 惑乱


「でも私……気づいてあげられなくて」

みわは、ぽつりと囁くように続けた。

「今思えば……前に、横浜でスズさんを見かけた事があるの。……向かっていたのは、あのビルの方角だった」

「そんなの……」

「練習中、元気がないなって思う事も多かったのに、"大丈夫です"っていう彼女の言葉を鵜呑みにして、気づいてあげられなくて」

「……」

「あの日だって、もっとちゃんと聞いてあげてれば」

「……そんなの!!」

オレの手に触れていたみわの細い手をグッと握った。
白くて細くて柔らかい感触は、いつもと同じで。
なんで、こんな事になってんのか、未だ分かんなくて。

みわは、この後に及んでもまだ、自分のせいとか思ってんの?
冗談だろ?

「そんなの、みわのせいじゃないだろ! 悪いのは全部、あの女だろ! なんで、なんでみわはいつもそう……!」

「涼太」

「なに? 許してあげてとでも言うんスか? みわがそう言っても、ハイそうですかとは……」

そこまで一息で言って、ハッと気付く。
何言ってんだ、こんな責めるようなこと……

「……許してあげてなんて、そんな事言えるほど、私……出来た人間じゃないよ……」

それは、みわの素直な言葉。
悲しい……悲しい、笑顔だ。
全てを諦めてるような、そんな表情。

「戻れるなら、あの時に……戻りたい。やり直したい」

"あの時"って……いつの事、言ってる?
みわの黒目がちな瞳は、この事件よりももっともっと過去を見ているようで。

「今でも、どうしてあの時、どうしてあの時って、後悔がグルグルと頭を回ってるの。今更言ったって、仕方ないのにね」

「……ごめん、そういうつもりじゃ」

「涼太……」

ぽろり、みわの目からまた涙が一筋。

髪を撫でていた手を止めて、ベッドへ投げ出された白い手を握る。

「涼、太……」

そこからまたしばらくの間、みわは泣いていた。

気付けば、自分の頬も濡れていた。

2人で、涙を流した。
泣いても泣いても、決して流れてはいかない後悔を抱いて。


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