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【黒バス:R18】解れゆくこころ

第74章 惑乱



ハァハァと、呼吸を乱しつつも手すりに全体重を預けて階段を上るみわを補助しながら、オレたちは9階へと到着する。

彼女に合わせて歩いていると、病室までの道が、随分長いように思う。

こんなに花マル健康なオレですらそう思うのだから、みわは永遠のように感じていることだろう。

病室に着くと、みわはベッドへと身体を投げ出した。

「はぁ……たいりょく、もどさないと……」

「なんか買ってくるっスよ、みわ」

失敗した。ここに戻る前に、自販機か何かで飲み物を買っておけば良かった。

「ううん、へーき……」

みわは、ぐったりと横たわったまま、動かない。
汗で額に張り付いた髪を整えてやりながら頭を撫でると、みわは瞳を細めた。

「……ごめん、なさい。時間、かかっちゃって」

「オレは気にしてないっスよ」

ゆっくり、ゆっくりと撫でていると、みわの呼吸が整ってきた。

さっきの……オレの足の話をしている時は、いつものみわだった。

みわが、ようやく見つけた目標。

彼女が、未来を見つめられるのと同時に、過去に負けないでいられる大切な要素だという事が分かった。

でも、こんな事件があって……4月からは新生活が始まるというのに、どうすればいいんだ。

このままじゃ、大学どころか、外出すら出来なくなってしまうかもしれない。

やっぱり……オレが離れるわけにはいかない。

オレの大学の近くでひとり暮らししようかと思ってたけど……ちょっと遠くても、みわと一緒に住むべきだろう。

「りょうた……」

みわが、オレの手にそっと、触れた。

「さっきは……ごめんなさい」

「さっき?」

……謝られるようなこと、あったっけ……

「スズ、さんの」

その名前を聞いて、自分でもハッキリと分かるほどピクリと反応してしまう。

「なんで、謝んの」

「涼太……?」

「なんでみわが謝んだよ。悪いのは、アイツだろ。みわは被害者だろ。なのになんで」

抑えろ、抑えろ。
そう思うのに、つい口調が……。





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