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【黒バス:R18】解れゆくこころ

第74章 惑乱


しまった、半ば強引に抱き上げてしまったから、体勢が崩れてしまって、ひねったりした?

慌ててみわを下ろす。
ヘンだと言う部分を、見てあげないと。

一瞬心配になったが、オレがみわの足を見てあげる前に彼女は跪き、オレの左足に触れだした。

左足がヘン……
って、オレの?

「涼太……これ、いつからなの?」

「これ……って、なんスか?」

聞き返しておいて、ふと思い出した。
左足……そうだ、アメリカでの練習後、疲れて寝落ちてしまった日の翌日……左足のふくらはぎに違和感があった。

痛みもないから、気にしてはいなかったんスけど……?

「ここ、筋が……放っておくと痛めちゃうし、全身に負担もかかっちゃう。ちゃんとしておかなきゃ、だよ」

「あ……うん、そっス、ね」

その物言いといい、動きといい、いつものみわだ。

バスケや選手の事になると、まっすぐで。
他に何も見えなくなる位、必死で。
いつもオレのことばかり。

まるで、今までの事が夢だったように。

ホッとした。
まだ、みわらしい部分がここにもちゃんと残っていた。

全部が壊されてしまったのではない事に気付き、オレは無意識に安堵のため息を漏らしていた。

「涼太? 痛む?」

心配そうに上目遣いをしてくるみわの頬には、痛々しいガーゼ。

無数のアザをつけている彼女にそのまま返したくなる状況だ。

……なんで、こんなに優しい子が。

無理矢理鎮めた怒りが、またふつふつと湧き上がってくる。

落ち着け。落ち着け。
これ以上みわの精神的ストレスを増やしてどうする。

「ダイジョーブ、痛くないっスよ」

そう言って、みわを再び抱き上げようとすると、これ以上ないくらいに抵抗された。

「だっ、だめ……! こんな状態で重いものを持つなんて、とんでもない!」

……そうは言われても、まだ7階。
9階の彼女の病室に辿り着くためには、階段を上んないと、いけないんスけど……。

その身体じゃ、無理だって。

そう説得しても、大丈夫、やれますと謎の言葉の一点張りでみわは階段を上りだした。

ちょっと(だいぶ?)ガンコなところもいつものみわで、困りながらも嬉しいと思う自分がいた。


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