第20章 夏合宿 ー3日目ー
「…………だ、だって、キスする時もそれ以上の時も、私ばっかりオロオロしてて、黄瀬くんはいつも余裕だから……」
「余裕じゃないっスよ、ゼンゼン。
ただ、やっぱ男のオレがリードしなきゃだし好きなコにカッコワルイとこ、見せられないじゃねぇスか……」
黄瀬くんが首元を押さえて、ちょっと俯きがちにそう言った。
照れてる時のクセだ。
「……黄瀬くんって、学校とかでキスしたり……え、え、エッチしたりしてた……?」
聞いてから、しまったと思う。
この聞き方は、あまりに直球すぎた……。
「……はあぁぁ!? しないっスよ! するわけないじゃないっスか!」
「だって、最初私にした時体育館だったし……」
「……っ、あれは例外! どうしてもしたくてたまんなかったんスよ……。オレ、そんなにいい加減に見えるんスか?」
噂を真に受けてるのを知られたくなくてあやふやにしたから、私がそう思ってるみたいに思われちゃってる?
違う。誤解されるのは嫌だ。
「私は、そんな事思ってないよ。
ただ……噂とかを聞くと……どうしても、不安になってしまって……ごめんなさい」
「ウワサ? あぁ、よく言われるっスね……ファンの子と片っ端からヤッてるとか。
ファンにそんな事するわけないじゃないスか」
「ファンじゃなくて……彼女さんとかなら……するってこと……?」
これは、揚げ足取りだろうか。
「しないって。オレ頭良くないっスけど、そーゆーとこはちゃんとしてるつもりなんスけどね……」
困った表情の黄瀬くん。
少しイラついてるようにも見える。
「だ、だって上手だし……いっぱい、女の子と、キス……した事あるんでしょう……?」
私、しつこく何聞いてるんだろう。
どう答えて欲しいんだろう。
「う〜ん、キス……そうっスね、正直キスは、気軽にしてた時期があるけど」
あ。
ほらやっぱり、聞かなきゃ良かった。
噂のまま、分からない方が良かった。
本人の口から聞くのって、こんなに、こんなにも、ショックなんだ……。
頭の中に、可愛い子たちとのキスシーンが勝手に思い浮かぶ。
絵になるワンシーンだ。
私なんかとは、全然違う。
「そ、そっか、うん、……大丈夫、ちゃんと分かってるから」