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【黒バス:R18】解れゆくこころ

第74章 惑乱




オレは、赤司っちに病室で付き添い宿泊する事を簡潔に話し、みわを連れて早々に部屋を出た。

赤司っちは、構わないよと言っただけで、スズサンとの事には何も言わなかった。

……お祖母さんの言う通り、あの場に居てもいい事は何もない。


「は……はっ、涼太、まって」

途切れ途切れのその言葉に、ハッと意識を戻す。
心なしか早足になってしまっていた。
寝たきりだった身体には、負担が大きかっただろう。

慌てて歩みを止め、繋いでいた手をほどき、細い肩を支えるようにして抱く。

こんこんと咳き込む背中を、労わるようにするりと撫でた。
さっきから体力の戻っていない身体に無理させてるのは、オレだ。

「ごめん。歩けるっスか?」

「ん、だいじょうぶ」

そう気丈に言うみわの足は震えていて、かなり無理をしているのが明らかで。

有無を言わさず、その身体を抱き上げた。

「っほ、え!? ちょっ、ま、涼太!」

「責任持って病室までお届けするから、大丈夫っスよ」

「お、下ろして!」

「いーから、ほら、ちゃんと掴まって」

みわが嫌がるお姫様だっこ。
長身の彼女の身体は、以前よりもまた重みを失ってしまっている。

力の入らない身体で抵抗するみわを抑えつけながらエレベーターホールに着いた途端、彼女の身体が硬直した。

さっきの、軽い過呼吸の症状。
嫌な事を思い出したと言っていたみわ。
エレベーターで、何をされたんだ。

改めて事件の壮絶さを、実感する。

オレは、エレベーターホールを抜けて、階段で9階を目指した。



「待って涼太、だめっ!」

みわを抱き上げたまま階段を上ろうとしたオレを、彼女の鋭い声が制止する。

今日会ってから、一番理性的な声だ。

「どしたんスか? みわ」

みわはオレの首に巻き付けていた両腕をほどき、ぺしぺしと肩を叩いた。

「涼太、左足がヘン……! 下ろして!」

「え」

左、あし?
みわの?
オレ、変な抱き上げ方したか?



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