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【黒バス:R18】解れゆくこころ

第74章 惑乱


「涼太、もう……」

何かを言いかけたみわは、ハァハァと息を切らしている。
支えている腕にかかる重さが、少しずつ増していくのを感じる。

「ご、ごめ、……っ、あの」

「なんで謝んの……ほら、ムリしないで」

手近な椅子を引き、みわを座らせても、彼女はオレの手を離そうとはしなかった。

もう、これ以上怒り狂うオレを見ていたくない、そんな表情だ。

……でも、おさまんねー。
足元から湧き水みたいに次から次へと溢れてくる怒りの感情が、身体の動きを鈍くさせている。

それでも、水なんかよりもずっとドロドロしたもんが、胸にずっとつっかえている。
叫んで全部吐き出したいのに、吐きそうで吐けない不快感がずっとつきまとってるんだ。

やっと、やっとみわが前を向いていけると、明るい未来があるんだと、希望を持ったそんな矢先に。

ふざけんな。
ふざけんじゃねーよ。

自分の思考で自分自身を煽ってると、よく分かっている。

みわが、あの悲しそうな目でオレを見てる。

「涼太、もう、行こう」

消え入りそうな声に、やめなければという思いがふつふつと湧き出してくる。

この怒りを、鞘におさめないと。
傷付けてしまう、みわを。

でも。

オレは、再びスズサンを睨み付けた。

「黄瀬先輩……!」

「アンタ、みわの前に二度と現れるな。海常バスケ部には二度と関わるな。
近づくのすら、許さねえ」

今まで無抵抗だったスズサンが、オレのその言葉に、ものすごい勢いで顔を上げた。

「おっ、お願いします! それだけは……」

それだけは、なんだよ?
どのツラ下げて、これからみわや海常の皆と接するつもりだ?

彼女の自分勝手な物言いに、握った拳に力が入る。

調子いいこと言ってんなよ。
みわは今、普通に生活することすら出来ないんだ。

アンタにも、それ相応の代償がなきゃ、終われねーんだよ。

アンタみたいな人間に、大事なひとたちを、壊されてたまるか。

「黄瀬、先ぱ……」

懇願するように、スズサンはオレを見上げる。

「オレはアンタを、絶対許さない」

喉元まで出かかった暴言の数々を飲み込み、みわの手を取って入り口へ向かった。


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