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【黒バス:R18】解れゆくこころ

第74章 惑乱


身体中の血液が、沸騰する。

頭ん中が、ゆで卵になっているんじゃないかと思うほど、聞こえる声も何もかも白身がボヨンボヨンと跳ね返してしまい、抑えがきかない。

溢れ出る怒りの感情を、制御出来ない。

みわをこんな目に遭わせたスズサンにも、みわを守れなかった不甲斐ないオレ自身にも。

荒れ狂う頭ん中、暴走するオレを、お祖母さんが止めた。

やめろ。
止めないでくれ。
お祖母さんの手を振りほどいてでも、同じ目に遭わせないと、おさまらない。

片手で掴んだスズサンの髪を全部引っこ抜いて、身に付けているものを全部剥いで。

死んだ方がマシだと、そう思わせてやらないと気が済まない。

なんでいつも、みわばかり泣き寝入りなんだ。
みわばかり、泣かなきゃならないんだよ。

許せない。
絶対に、許せない。

お祖母さんの手を振り払おうと、腕に力を込めた瞬間……

「りょうたっ」

テーブルの向こう側に座っていたみわが立ち上がって、こちらに走ってこようとして……よろめいた。

「あぶっ……!」

スズサンの髪を掴んだ腕も、お祖母さんに掴まれた腕も咄嗟に解放して、みわへ駆け寄る。

間一髪、倒れる前に腕の中へおさまる身体。

「……りょう、た」

みわは、泣いていた。

泣かせたくないのに。
笑っていて、欲しいのに。

何度こうして葛藤しただろう。
結局、いつも同じじゃないか。

みわを、みわと彼女が大切にするものを守ってあげたい。

ただ、それだけなのに。

「…………ッ……」

さっきよりも更に強く、奥歯を噛んだ。
ギシリ、頭蓋骨が軋んだような錯覚。

「黄瀬さん、みわと病室に戻って」

お祖母さんは、優しく、いつもの口調でそう言った。

「オレ、許せません」

熱い頭を強く振っても、その熱は逃げる事を知らずにこもる一方で。

「みわの側に、居てあげて」

分かってる。
けど……

「涼太……」

……みわがそんなことを望まない、ってのも分かってる。

…………

「……クソッ……!」

スズサンは動かなかった。
ごめんなさいごめんなさいと、泣きながら呟くだけだった。





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