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【黒バス:R18】解れゆくこころ

第74章 惑乱


それから暫く、みわは泣いていた。

言葉にならない言葉たちが彼女の口から零れていくのを、オレはただ、うんうんと聞いていた。

それから少し、鼻を啜る音と嗚咽が続いて……突然腕の中のみわから、くたりと力が抜ける。

驚いてみわを見やると、目と鼻を真っ赤にしながら、彼女は眠っていた。

「みわ、寝てしまったのかしら」

入り口付近から聞こえる声、お祖母さんだ。

「あ、ハイ、今……」

少し大きな声で返事をしても、みわはピクリともしない。
小さく規則的な寝息が聞こえるだけだ。

「眠れて、良かった……事件があってから、ずっと睡眠薬がないと眠れなかったのよ、この子」

そう言って、お祖母さんもみわの髪をふわりと撫でた。

「記憶……無くならなかったんスね」

あんなにショッキングな事件だったのに、みわの記憶が失われていない事に驚いた。

むしろ、忘れていた方が幸せだっただろうに……。

「多分、みわにはもう貴方がいるから、"記憶を無くして身を守る"必要がないと、身体が判断したんじゃないかしら……それがいい事なのかどうかは、断言出来ないけれど」

お祖母さんの言葉に、オレは深く頷いた。
オレを心の拠り所にしてくれているのは嬉しいが、こんな辛い事まで背負っていかなければならないなんて。

泣いて腫れた目をそっとさする。

「みわ、やっと泣けたのね……」

「え?」

「事件の後、誰の前でも、涙は見せなかった。こころを許せる人の前だと、ちゃんと泣けるんだって分かって、安心したわ」

お祖母さんも、みわにとってはこころを許している人間の1人だと思うけど、それよりも"心配かけてはいけない"という気持ちが先に立つんだろう。

みわを、こんな目に遭わせて……
改めて胸の奥に渦巻く怒りを、自覚せずにはいられなかった。


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