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【黒バス:R18】解れゆくこころ

第74章 惑乱


考えがまとまらないまま、暫く病室の前で蹲っていた。

抱え込んだ頭が痛い。

みわの気持ちが、あの悲痛な声とともに流れ込んでくるようだ。

結局オレが、みわの負担になってるのか?


……

物音一つしない空間にいると、かえってザワザワと胸が落ち着かないことに気づく。

だめだ、ここでこうしていても仕方ない。
ごくりと唾を飲み込み、再び病室へと足を踏み入れる。

まだ、お祖母さんはみわと話をしているようだ。

ぴちゃん、と響く音に目をやると、締め方の緩かった蛇口が、文句を言うように一滴一滴、雫を吐き出している。

そんな微かな音がみわに届くわけはないのに、何故だか焦って蛇口を締めた。

「……それはわかったけれど、黄瀬さんはどうするんだい? いつまでも隠せるものじゃない事くらい、みわだって分かってるんだろう?」

お祖母さんの、声。

「……」

「彼なら、ばあちゃんのお見舞いに行くと言ってくれるんじゃないかい? そうなったら、時間の問題だよ」

……もう、既にそういう事態になっている。
申し訳ないやら何やらだ。

「……」

「みわ」

「……わかってる。涼太には、ちゃんと話す」

決意したような、覚悟したような口調だ。
でも、良かった。みわがそう言ってくれて、ホッと胸をなで下ろす気持ち。

ちゃんと、オレに話すと思い直してくれたことに、安堵した。

「そうかい、じゃあ黄瀬さんに来てもらおうかね」

「待って、おばあちゃん。涼太には、私が声をかけるから」

「ん?」

「ちゃんと、こころの準備が出来たら、話す。
今は多分、取り乱しちゃうと思うから……卒業式までには、話すよ。もっと、落ち着いてから」

……なんだよ、ソレ。



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