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【黒バス:R18】解れゆくこころ

第74章 惑乱



さっき、お祖母さんとの会話……

「喋れないって……失声症、とか失語症、とかってヤツっスか?」

テレビドラマで観るような話。
でも、今実際に起きている現実だ。
しっかりしろ、オレ。

「いいえ、そういうんじゃないの……喋れないというよりも、喋らない……喋ってはいけないと思い込んでいるような……なんて言うんでしょう、会話が成り立たないの。心ここに在らず、という表現が近いのかしら……」

お祖母さんは、上手く説明できないと言っていた。

当たり前だ。
あんなに酷い事件に遭ったんだ。
恐らく、かなりのショック状態のはず。

ゆっくり、歌うように話してくれるいつものみわの声が聞きたい。

でも、無理強いだけはしちゃダメだ。






通路の奥から聞こえる赤司っちの声。

「神崎さん、今日は雨が降っているよ」

「傷は痛む?」

赤司っちが、みわに様々な質問を投げかけていても、みわの声が聞こえる様子はない。

「神崎さん、黄瀬が心配していたよ」

赤司っちがそう言った途端、布団が擦れるような音。



「……赤司、さん?」

「こんにちは。気分はどうかな」

「……ごめ、なさい。気がつかなくて」

みわだ……

掠れて掠れて、耳を澄まさなければ聞き逃してしまいそうな声。

みわの声が聞けて、安堵するのと同時に渦巻く不安。

赤司っちがあんなに近くでハッキリと喋っていたのに、気がつかなかったという彼女。

精神が、ボロボロになっているのが分かる。

そこからまた、みわの声はしなくなった。

「……また来るよ、お大事に」

赤司っちのその言葉に、小さな声ですみません、と答えていた。


赤司っちが、通路を引き返してくる。
それと入れ替えに、今度はお祖母さんがみわのところへ。

「みわ。どうだい」

また、しばしの間。

「おばあ、ちゃん……私、赤司さん、に、気付かなくて」

「大丈夫、そんな事を怒るような人じゃないよ」

しん。

そこから暫く、無言だった。

「みわ。黄瀬さんに、来て貰わない?」

お祖母さんが、そう言った直後。

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